一度に大量の糖質をとることは、体にとって異常事態
私たちの体は、糖質の量が減ると、体内の物質を使って糖質を新たにつくり出します。これが「糖新生」です。この糖新生が、現代の生活では「朝、起きるのがつらい」という状況をつくり出している可能性があります。
そもそも人間の体は、長い進化の歴史のなかで、わずかな糖質で大自然を駆け回れるほどのエネルギーを産生できるように発達していると考えられています。自然界では木の実など糖質源が限られていたからです。
人体がわずかな糖質で元気に働けることは、糖質に対応するホルモンの数を見てもわかります。ホルモンとは、ある特定の器官に対して、情報を伝達したり、作用を及ぼしたりする、体内でつくられる化学物質のこと。
血糖値を上げるホルモンは5種類もあります。これらのホルモンは、体内の糖質量が減ると「ブドウ糖をつくり出して!」との情報を伝達して、糖新生を起こさせます。
これに対し、血糖値を下げるホルモンはインスリンのみ。人類の長い進化の歴史では、血糖値を下げなければいけない状況はほぼ起こらなかったため、それに対応するホルモンも必要なかったと推定されています。
つまり、現代の食生活のように、一度に大量の糖質をとることは、体にとってまさに異常事態なのです。
朝起きられないのは「前日の夕食」が原因?
最近、起立性調節障害によって不登校になる子どもが増えています。起立時に体や脳への血流が低下してしまう病気で、自律神経の働きの乱れが原因と見られています。これが朝の起床時に起こると、倦怠感や頭痛、立ちくらみに襲われ、気分が悪くなって、起き上がれなくなってしまうのです。
この疾患の原因が、糖質のとりすぎにあるのではないか、と報告されています。
夕食でごはんをたくさん食べたり、麺類だけ、カレーライスだけといった糖質に偏った食事をしたりすると、血糖値スパイクが起こります。
すると、就寝中に低血糖が生じます。こうなると、次に起こってくるのが糖新生です。体は血糖値を上げるホルモンをいっきに分泌させ、糖新生を急速に起こします。それによって、血糖値が急激に上がります。
血糖値は、急激に上がれば、必ず急激に下がり、しかも低血糖を引き起こします。
こうしたことが、就寝中にくり返されてしまうのです。
それによって、自律神経の働きが乱れます。しかも、血糖値の乱高下に振り回され、脳はゆっくり休めません。そのため、熟睡感を得られないのです。
そして、低血糖が起こっている状態で朝を迎えることになります。そのとき、どんな症状が現れているでしょうか。「起き上がるのがつらい」「もっと寝ていたい」という感覚です。
症状が重ければ、フラフラして気分が悪く、頭痛も起こりやすくなっています。この状態では布団から起き上がる気力を持てません。