「雨の日に傘をさしたほうがいい理由」を考えてみる
さて、これで因果関係を把握することがとても大事だということが伝わったと思うので、ここからは東大生の親御さんとの会話を元にして我々が作った「因果関係を問うクイズ」を2つ紹介させてください。
A 傘をささないと、濡れて風邪を引いてしまうかもしれないから
B 傘をささないと、雨に濡れてしまうから
C 傘をさすと、雨に濡れないから
D 傘をさすと、気分がいいから
BとCは、一見間違っていなさそうに見えます。でも、よく考えてください。「濡れてしまう」というのは、ただの情報です。濡れるのが嫌なだけなら、人間はお風呂に入らないでしょうしプールにも入らないでしょう。
「雨水に濡れて、身体の体温が下がって、風邪を引いてしまうかもしれない」というように、「濡れる」ことが原因となって、違う結果が生まれてしまうから、雨水に濡れることはよくないとなっているわけですね。
Dは、正しそうに見えるのですが、「雨の日に」さした方がいい理由ではないですね。気分がいいのは晴れの日も同じです。傘をさした方がいい理由にしかなっていません。だから、正解はAです。
普段の会話から「なぜ」「どうして」を考えてもらう
もう一問、挑戦してみてください。
A 1年の最初に使ってしまうと、その後で本当に欲しいものが買えなくなってしまうから
B 貯金することは気持ちがいいものだから
C お金を過度に使いすぎてしまうと、将来ろくな大人にならないから
D お年玉を貯金しておけば、どんどんお金が貯まっていくから
Bは、「貯金することは気持ちがいい」となっています。この情報が正しいかはさておき、これは「貯金すること」の理由ですね。
でも、なぜ「お年玉を」貯金した方がいいのか、という理由にはなっていないですよね。ですからこれは間違いになります。
Cの「お金を過度に使いすぎてしまうと、将来ろくな大人にならない」は、「過度にお金を使わない方がいい理由」であって、「貯金した方がいい理由」ではないですよね。
同じようなことを言っているとは思いますが、「過度にお金を使わない」=「貯金する」と言うわけではないでしょう。適度に使うのであれば問題ないはずです。
Dは、「貯金するとお金が貯まる」と言うのは間違いではないでしょうが、理由にはなっていないですね。
お金が貯まって使えるようになるお金が増えたり、何か買いたいものが発売された時に買えたりするから、と「お金を貯める」ことを原因とした別の「結果」が出てきて初めて、「お金を貯めた方がいい」理由になります。ですので正解はAになります。
いかがでしょうか? これらの問題は、一見簡単そうに見えても、しっかりと深く考えないと答えが出ませんよね。
これと同じで、子供とのちょっとしたコミュニケーションの中でスルーしてしまっていることの中にも本当は、「厳密に言うと理由になっていないこと」が山ほどあるかもしれません。
ですから、親御さんはぜひ、普段の会話から子供に「理由を考える習慣」を付けることを促しましょう。「なんで?」「どうして?」と聞いて、考えさせる。そして「理由として適切かどうか」という点をしっかりと重視し、指摘していく。
これらを徹底すれば、子供がどんどん賢い子になっていくと言えるのではないでしょうか。