親子の会話で「因果関係」を訓練する

絵本を読み聞かせられているときに「これってなんでだと思う?」とよく聞かれた。「この登場人物はなんでこう思ったんだろうね?」という質問をされて、一緒に考えるのが楽しかった(理1・2年)

「理由になっていない」ということはよく言われた。「こういう理由で、こういうものを買って欲しい」とか「こういう理由で、こうしたい」って言うと、「それは理由になっていない」と言われて、何度も主張を改善した経験がある(経済学部・4年)

これらのコミュニケーションは、因果関係をしっかりと結び付ける能力を育ててくれます。

因果関係とは、「原因と結果の結び付き」のことです。例えばあなたは今、お腹が痛いとします。お腹が痛いということは、お腹が痛くなった原因があるはずです。

例えば、変なものを食べてしまったのかもしれません。お腹を冷やして寝てしまったのかもしれません。食べ過ぎかもしれないし、病気かもしれない。でもなんにせよ、なんらかの理由があるはずなのです。

接続詞でいうところの「だから」で結ばれているものや、「なぜなら」で結ばれているものですね。

文章の多くは、主張と、その理由が述べられています。「日本は16歳から選挙権を与えるべきだ、なぜなら〜」とその理由が文章として語られていたり、「人間はもっと挑戦するべきだ。その理由は3つある。1つ目は〜」と、主張を裏付けるための理由を複数個述べて文章になっていることもあります。

因果関係をしっかり理解すれば、文章を理解することができるようになるのです。

東大生の親は「理由になっているのか」を見極めている

特に小さい子は、まだこの因果関係の把握能力が低い場合があります。

例えばよく小学生くらいの生徒が書く文章の間違いとして、「A駅には電車で行くべきだ。なぜなら、遠いからだ」のような間違いがあります。大人が読むと違和感がありますよね。「遠いからといって、電車じゃなきゃいけない理由は何?」と。

「A駅には電車で行くべきだ。徒歩で行くには遠すぎるし、車で移動するには回り道になってしまう。バスも出ていない。だから、電車で行くべきだ」というように、「電車で行くべき」という主張をするためには、しっかり「それ以外の選択肢がダメな理由」を述べなければなりません。

これが子供のうちはまだ、うまくいかないわけですね。

また、「答えっぽいけど、答えでない」という間違いのパターンもあります。例えば、「この傘はAくんがこの前買っていた。だから、この傘が欲しい」というような主張を子供がする場合がありますが、これも本当は違和感のある話です。

「Aくんが買っていた傘だからって、なんでこの傘が欲しいの?」となってしまいます。

「Aくんが買っていた傘で、自分もその傘を見てすごくいい傘だと思った。だから、この傘が欲しい」というように、論理的な「つながり」がないと、この文は不成立になってしまうのです。

東大生の親御さんは、これらの因果関係に対して敏感で、「理由になっているかどうか」をしっかりと見極め、指摘する場合が多いです。

会話する母と娘
写真=iStock.com/Milatas
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さまざまな物事や主張に対して理由を聞き、しっかりと子供の頭の中で因果関係が結び付くような訓練をさせています。日常会話の中でそれが自然と行われていると、因果関係の把握能力が高くなっていくわけです。