相続の約束事は口頭ではなく文書で
相続手続きで使用される実印や印鑑登録証明書は思っているより重要なものです。
納得がいかなかったとしても自ら実印を押してしまっている以上、すでに成立した合意をなかったことにするのは困難です。
納得できていないことがあるなら、それをそのままにして「とりあえず」ハンコを押す、という選択肢は採るべきではありません。
また、内容が理解できないまま、あるいはあやふやなまま実印や印鑑登録証明書など重要なものを相手に渡すべきではありません。
内容を知らされないまま勝手に使用されたのであれば、当該手続きが無効になると考えることができますが、「内容を知らされないまま勝手に使用された」という事実を証明するのは難しいでしょう。
遺産分割協議書に記載のない約束は、録音やその他の証拠がない限り、その約束をしたこと自体を証明できないため、なかったこととして扱われてしまう可能性が高いです。
遺産分割協議においては、すべての約束事を文書に明記し、協議書にはそれが反映されるようにすることが重要です。
相続では言われるがままになってはいけない
「相手が内容をよく理解できていないのに乗じて、自分にとって有利な内容の遺産分割協議書を完成させてしまおう」と考えている場合、相手に考える余裕を与えないために、遺産分割協議書を見せたその場で署名押印するようしつこく求めたり、署名押印するまで相手を帰らせないようにするケースもよく見られます。
特に、法要のときは他の親族の目もありますし、自分の意見を言いづらい状況になっていることもあります。また、日ごろから頭が上がらない、怖い、などと思っている人が相手の場合、その人から凄まれたりして、言われるがままという状態になってしまうこともあります。
そのため、理由などをちゃんと説明されないまま「今度の法要のときに実印と印鑑登録証明書を持ってきて」と言われたときは、本当にこれらを持っていくべきなのか、慎重に検討するほうがよいでしょう。