この場合、あえてちょっと悪いことをしてみるのも効果的です。たとえば、外での打ち合わせが終わったあと昼から2人でビールを飲んでしまうとか、喫煙者同士なら全館禁煙の職場なのに非常口付近で隠れタバコを吸うとか。なぜなら、共犯意識を持った人間ほど仲良くなれるものだからです。ただし、法律に触れない罪のない程度の悪事にしておいてください。

自分の側から積極的にコンタクトを図ることは、精神的な負担も減らします。仕事で会う日時を決めるアポ取りも、嫌いな相手だと後回しにしたい心理が働くもの。しかし、むしろ逆に、電話は自分のほうから掛け、会う日も週の頭のほうに設定してしまう。

自分から連絡を取るのは、敵をコントロールすることに繋がります。月曜日に真っ先に電話して「明日の火曜日どうですか」と決めてしまう。そうすれば、「ヤツはいつ来襲するだろうか。いつ電話が掛かってくるだろうか」と、ビクビクする必要がなくなります。

金曜日ではなく火曜日に会うことにしてしまえば、週末まで重い気分を抱えている必要もなくなります。嫌いな相手ほど、むしろ真っ先に連絡を取って真っ先に会う。こうしてコンタクトを増やしていけば、気がついたときには慣れてしまっていることでしょう。

嫌いな上司に頼まれた仕事なら、自分から積極的に報告に行くこと。「今週の金曜日までに仕上げます」と自分の側から通告してしまえば、その間、「あれ、どうなった?」と「上司からいつ尋ねられるかもしれない」という怯えからかなり解放されるでしょう。

嫌いな相手を征服するのに、以上の共通点探しや地道なコンタクトを「一歩一歩のコツコツ型登山」とすると、ヘリコプターで一気に頂上をめざすのがフラッディング(flooding)と呼ばれる方法です。

フラッドは洪水。たとえばヘビが苦手、大嫌いという人に対して、ヘビを触らせるという行動療法があります。触った瞬間はギャ~ッとなります。感情の洪水です。しかし、一回この洪水が起こると、人間は慣れてしまうものなのです。数秒では駄目。よけい嫌いになってしまいます。ギャ~ッとなったあと、なおもそのまま何分間も触り続けていると、「なんだ、たいしたことない」と思えるようになるのです。荒療治です。

嫌な取引相手や同僚だと仕事上の付き合いだけになりがちですが、思い切って「一緒に飲もう」「カラオケに行こう」「一緒に旅行しよう」などと誘ってみてはいかがでしょう。嫌いな人ほど自分のふところ深く入れてしまえば、嫌悪感は克服できるのです。

人を嫌う場合、たいがいのケースは何となくソリが合わないとか生理的に嫌だとか、自分の側の感覚によるものです。

「いや、世の中には誰もが絶対的に嫌だと思うヤツがいる」と言いたい人もいるかもしれません。そういう人物には、どう対処したらいいのでしょうか。