一番かっこいいとあこがれるのは絶対に自分を曲げない“よね”
というのも、寅子はなんだかんだ自分を“曲げられる”女なんですよね。妥協するし、目的のためには手段を選ばないところもある。一方、よねは自分を“絶対に曲げない”という気持ちが強いので、お互いにとって「自分がなれなかった女性像」「自分にないものを手に入れている女性像」という面があります。どちらかが持っていてどちらかが持っていないものを描いていくことは、寅子とよねの関係性において、一貫して意識していました。
それと、よねのような人がかっこいいと思われる社会が良いなという、私自身の思いもあります。よねはある意味ヒーロー的に描いているんですね。私自身が一番かっこいいと感じるのは、やっぱりよねだから、そういう憧れを抱ける対象を描きたいという思いがありました。
寅子やよねが若かった頃、当時の女性はズボンを履くことすら一般的ではありませんでした。山登りのシーンでもみんなスカートを履いているくらいですから。でも、そんな中でも、自分を曲げずに男と同じ格好をするというスタイルでずっとやってきた人物だということを描きたいと思いました。もし今回、三淵嘉子さんをモデルにした物語ではなく、完全にオリジナルストーリーなら、たぶんよねのような人を主人公にしたんじゃないかと思います。
「恐るべき子供」美佐江は、男子生徒の設定を女子に変更
人物描写について、わかりにくいキャラクターとして新潟編で登場したのが、美佐江です。
もともと後半から最後に向けて「どうして人を殺してはいけないのか」と問いかけてくる、寅子には理解できない、手に負えない存在を描くことは決めていました。ただ、もともとは男性の設定だったんですが、制作陣から戦災孤児の道男や、両親に親権を拒否された栄二、花江の子・直人と直治も含め、後半に登場する男の子がいっぱいいるから、ここは女の子にしたいと言われ、私も納得して女の子に変えました。
でも、性別が違うと設定が全部変わってしまうので、どうしようかと迷いました。もともと男の子として考えていたときには、殺し以外はなんでもやっているような、本当に手に負えない怖い不良少年として設定し、寅子が自分や娘に実際に危害を与えられかねないと恐れる存在にしようと思っていたんです。