「表示指定成分」を表示すれば良かった
それまでは、化粧品の成分については「厚生労働大臣の定める基準に適合するものでなければならない」とされており、薬事法(当時)で決められた「表示指定成分」を表示すれば良い、とされていました。
「表示指定成分」とは、人によってはごくまれにアレルギーなどの問題を引き起こす可能性があると認定された成分のことで、成分としてそれらを使っている場合は、表示しなければならない、ということになっていました。
しかしこの法改正により、化粧品に配合されているすべての成分を、外箱または容器に表示しなければならなくなったのです。
全成分表示が義務になったので、消費者にとっては一見、安心・安全に思えますが、これは、裏を返せば消費者に対して、こう言っているのではないでしょうか。
「化粧品のパッケージをよく見てください。全成分が表示されていますよね? あとは調べるのも、使うのも、ご自身の責任でお願いします」
どうでしょう?「えっ、自己責任なんてひどい!」って思いませんか? 化粧品の成分がすべて表示されているとはいえ、化粧品の外箱や容器に書かれた文字はアリのように小さくて読めませんし、そもそも、どの成分が危険で、使用を避けた方が良いのかなんて、ほとんどの人は理解できないでしょう。
薬用化粧品には全成分表示の義務がない
さらに怖いのは、「薬用化粧品(医薬部外品)」に関する規定です。
これは有効成分を配合した化粧品のことです。薬用と名がついていても決して「くすり」ではなく、いってみれば「化粧品以上、医薬品以下」という感じです。
薬用化粧品は化粧品と違って、全成分表示の義務はありません。その代わり「有効成分」と、アレルギーなど肌トラブルを起こす可能性のある102種類に香料を加えた103種類の「表示指定成分」さえ表示すれば、他の成分は一切表示しなくて済むのです(2022年9月現在)。
たとえば、よく、ビタミンを豊富に含む薬用化粧品があります。「美白効果がある」といった謳い文句で、ドラッグストアなどでも売られていますが、これらの場合、規定の有効成分を1種類以上表示すれば、表示指定成分以外はまったく表示しなくて良いことになります。