異なるチャンネルに分散させるほうが効果的

そのため、効果的なインプットには、ワーキングメモリーの容量をうまく使うことが大切です。

そこで効果的なのが、入ってくる情報を「聞く」「見る」など、いわば、違った「チャンネル」からのインプットに分散させることです。

話を聞くだけで理解しようとしても複雑でお手上げだったのに、図解を使ってくれた瞬間、わかりやすくて理解できた。そんな体験は、誰しもがあるはずです。

「文字+イラスト」なら簡単に理解できる

次の図表2をご覧ください。

例えば、チェスのナイトの動きについて、「前か後ろに2マス移動した後、右か左に1マス、または右か左に2マス移動した後、前か後ろに1マス移動できます」と耳で聞くだけではなかなか理解しにくいところ、図表2のようにナイトの動きの例を目で見ながら聞けば簡単に理解できます。

星友啓『スタンフォード大学・オンラインハイスクール校長が教える 脳が一生忘れないインプット術』(あさ出版)
星友啓『スタンフォード大学・オンラインハイスクール校長が教える 脳が一生忘れないインプット術』(あさ出版)

この現象は、「聞く」だけで情報をインプットしようとするとワーキングメモリーがパンクしてしまうものの、「見る」も使ってインプットをすると、情報処理の負荷が「聞く」と「見る」とに分散できて、ワーキングメモリーをより効率的に使うことができるということを示しています。

つまり、「読む」「聞く」「見る」のどれが一番効果的かということよりも、どのようにそれらをミックスした形でインプットできるかが重要なのです。

ワーキングメモリーへの負荷を分散して効果的にインプットするために、スマートフォンやコンピューターなどのマルチメディア環境で、ベストミックスのインプットを実現していきましょう。

※1 Buchweitz A., Mason R., Tomitch L., Just M. (2009). “Brain activation for reading and listening comprehension: An fMRI study of modality effects and individual differences in language comprehension.” Psychology & Neuroscience, 2:111-123.

※2 Wolf M.C., Muijselaar M.M.L., Boonstra A.M., et al. (2019).“The relationship between reading and listening comprehension:shared and modality-specific components.” Reading and Writing,32:1747–1767.

※3. Ritzhaupt A.D., Barron A. (2008). “Effects of Time-Compressed Narration and Representational Adjunct Images on Cued-Recall,Content Recognition, and Learner Satisfaction.” Journal of EducationalComputing Research, 39(2):161-184.

※4 Pastore R., Ritzhaupt A.D. (2015). “Using Time-Compression to Make Multimedia Learning More Efficient: Current Research and Practice.” TechTrends, 59:66–74.

※5 Cheng L., Pastore R., Ritzhaupt A.D. (2022). “Examining the Accelerated Playback Hypothesis of Time-Compression in Multimedia Learning Environments: A Meta-Analysis Study.” Journal of Educational Computing Research, 60(3):579-598.

※6 Ritzhaupt A.D., Gomes N.D., Barron A. E. (2008). “The effects of time-compressed audio and verbal redundancy on learner performance and satisfaction.” Computers in Human Behavior,24(5):2434–2445.

※7 Ritzhaupt A.D., Barron A. (2008). “Effects of Time-Compressed Narration and Representational Adjunct Images on Cued-Recall,Content Recognition, and Learner Satisfaction.” Journal of Educational Computing Research, 39(2):161-184.

※8 Cowan N. (2008). “What are the differences between long-term, short-term, and working memory?” Progress in Brain Research,169:323-338.

※9 Cowan N. (2010). “The Magical Mystery Four: How is Working Memory Capacity Limited, and Why?” Current Directions in Psychological Science, 19(1):51-57.

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