ひと昔前なら「ハゲタカ」として即刻拒絶だった

カナダの流通大手、アリマンタシォン・クシュタールによる、セブン&アイ・ホールディングスへの買収提案の行方に注目が集まっている。ひと昔前ならば日本企業を狙う「乗っ取り」「ハゲタカ」として、会社側が即刻拒絶したに違いない。だが、時代は変わりコーポレート・ガバナンスの強化が重視される今、経営者も「株主の利益」を真摯に検討する態度を取らざるを得なくなった。大幅な円安で、今後、日本企業の海外からの買収が増加すると見られる中、セブン&アイの買収劇がどういう結末を迎えるかは、歴史的に大きな意味を持つことになりそうだ。

セブン&アイ・ホールディングスのロゴマーク
写真提供=共同通信社
セブン&アイ・ホールディングスのロゴマーク

買収提案の話が伝わった8月19日、東京株式市場では、セブン&アイ株に買い注文が殺到。値幅制限いっぱいのストップ高である前週末比400円高の2161円で取引を終えた。19日時点の時価総額は5兆円で、実現すれば世紀の買収劇となる。セブン&アイ側は社外取締役からなる特別委員会を設置、提案が企業価値の向上につながり株主の利益に合致するかどうかの検討を行っている。

ここ数年「外圧」にさらされてきた

もちろん、経営陣からすれば、海外大手による買収は、自らの経営権を奪取されることを意味しており、心情として両手を上げて賛成、という話にはなりにくい。今回の提案の具体的な内容は明らかにされておらず、出資比率や株式の取得方法も不明だが、アリマンタシォンとの連携を受け入れるにせよ、拒絶するにせよ、セブン&アイの一段のグローバル化など成長戦略が重要になってくる。

というのも、セブン&アイはここ数年「外圧」にさらされ続けてきた。2023年3月、セブン&アイの発行済み株式の4.4%を握っていたアクティビスト(モノ言う株主)の米投資ファンド、バリューアクト・キャピタル・マネジメントが、セブン&アイに対して「株主提案」を行った。5月25日開催の定時株主総会で、井阪隆一社長ら取締役4人の退任と、それに代わる新たな取締役4人の選任を求めたものだった。