ネットワーク性が法則に加わった

実は3カ月前に、ようやくiPhoneを買いました(※雑誌掲載当時)。長年のマックユーザーで、周囲から勧められていたにもかかわらず、それでも頑なに購入しなかったのは、iPhoneは電話だと思っていたからです。携帯電話ならすでにもっているから必要ありません。

不覚でしたね。iPhoneは電話なんかじゃない。コンピュータです。インターフェースを見ればわかるように、電話機能は他のアプリ同様の扱いしかされていない。それに気付いて以来、にわかにハマりました。

しかし、もしiPhoneをそのままコンピュータとして売り出していたら、ここまで爆発的な売れ方はしなかったはずです。「電話です」と売り出しておきながら、その実「中身はネットワークに繋がるコンピュータだった」という意外性があったからこそ、iPhoneは大ヒットしたのです。

売れる商品とは脳の欲望が具現化したもの。そして人間の脳は、慣れ親しんだ「定番性」と、アッと驚くような「サプライズ」を好みます。

たとえば「食べるラー油」。あれはラー油というどこの家庭にでもある「定番」に、あえて具を漬け込んだ「サプライズ」が受けたわけです。

AKB48もそう。日本のアイドルはおニャン子クラブ以来、普通の女の子がなるものという大原則に貫かれています。2010年は韓国から少女時代が上陸しましたが、あちらはサイボーグのような完璧な容姿です。しかしAKB48 は、あえて不揃いの魅力を前面に押し出した。選挙制という、甲子園を目指す少年たちのようなイメージを演出しながらも、一方ではアキバ(秋葉原)発アイドル、AKB48というネーミングの奇抜さでサプライズ感を出した。

サントリーのハイボールも、LED電球も同様です。LEDなどは耐久時間や明るさ、消費電力からしてまったく新種のハイテク商品にもかかわらず、あえて「電球」として売り出した点に、消費者の安心感が刺激されたわけです。

すべてのヒット商品は、「定番性」×「サプライズ」で説明がつくのではないでしょうか。