看板は“最高にコスパが良い”と言えるワケ

ひるがえって、インターネット広告は、ポータルサイトに載せるマス広告的なものもあるが、基本的にはターゲティング広告といえる。

関心あるキーワードを検索したり、それ自体を探していたりする過程で出会い、それをクリックしなければ詳細はわからない。マス広告とは、まったく成り立ちが違うものである。

そして、ターゲティング広告は、実は効率が悪いのではないかとわたしは考えている。なぜなら、もともとそれを欲している人しか反応できないからだ。

それよりも、何度も目に入ってくるものを(無意識にでも)覚えてしまう人間の性質を利用したマス広告のほうが、潜在顧客は圧倒的に多くなる。もともと欲していないものですら、繰り返し見るうちになんとなく欲しくなってしまうのだから、極めて強力な集客方法といえるだろう。

そのうえ、看板はエリアを限定するので、より効率的なマス広告になり得る。ある意味では、ターゲティングの要素も兼ね備えたハイブリッドな広告なのである。

しかも、繰り返しになるが、圧倒的に安価で取っ掛かりやすく、24時間視認できて、不特定多数の人に第一想起させられるわけだから、最高にコスパがいい広告ではないだろうか。そうした点に、わたしは看板の面白さと魅力、そして大きな可能性を感じたのだ。

大企業の広告には「熱量」を感じない

むかしから、街中にあたりまえに存在するにもかかわらず、看板広告の絶大なる効果に意外と多くの人は気づいていないと述べた。

街を見渡すと、とにかくいろいろな看板が目に入ってくるが、あまり頭に入らない広告も多いものだ。たとえ頭に入ったとしても、すぐに出ていき忘れてしまう。その理由はいわずもがな、ほとんどの場合、看板をひとつ、ふたつ出す程度で終わってしまうからだ。

看板の効果を最大限にするためには、ただ目立つ看板を置けばいいという単純な話ではないのである。そうではなく、同じ看板をいくつも並べて、一気呵成かせいに展開するからこそ、強烈な刷り込み効果が生まれる。

看板広告を積極的に展開している大企業もある。資金が豊富なので、それらの企業はかなりの規模で看板広告を展開できる。

だが、わたしにいわせれば、マーケティング部の人間は所詮、雇われ人であり、身銭を切って看板を置くわけではない。そのせいか、ただ地図やリサーチ結果をにらみながら、賑わう場所や交通量の多い場所に、ただ落とし込んでいるだけのように見える。

当然、そんな置き方では人の頭に入り込むことができない。広告主の「熱量」を、なにも感じさせない置き方だからだ。

「きぬた歯科」のきぬた泰和院長
写真=KADOKAWA
「きぬた歯科」のきぬた泰和院長