ネーム、下書き、ペン入れの過程で“分業”を徹底

丸山さんはZoo氏から届いたストーリーの元となる文章を、まずラフ絵にあたる〈ネーム〉に起こす。その後、確認に出すZoo氏からOKをもらったら、できるだけ丁寧に〈下書き〉する。

次の工程は〈ペン入れ〉となるが、多くの漫画家は背景だけをアシスタントに依頼するという。しかし、丸山さんは作業効率を上げるため人物のペン入れもアシスタントに任せる。それを可能とするのが、一つ前の下書き時の丁寧さだ。

作品の仕上がりを大きく左右するペン入れ作業は作者自身が担うことが多いが、丸山さんは前工程の下書きを丁寧にやることでアシスタントと業務を分担している
筆者撮影
作品の仕上がりを大きく左右するペン入れ作業は作者自身が担うことが多いが、丸山さんは前工程の下書きを丁寧にやることでアシスタントと業務を分担している

さらに自身が実践しているようにアシスタントには徹夜厳禁とし、人によっては最低限の筋トレと散歩を義務化する。そして、漫画作りのノウハウを紹介している自身のYouTubeをアシスタント教育にも活用している。

登録者数が2万5000人を超えたYouTubeでの発信の成果もあり、近年、美大や専門学校などで講演する機会が増えた。そこで接する学生の多くは、〈絵で食べていくこと〉を目指すが、実現するのはほんの一握りだ。

「自分が勝負できるスペースを見つける」大切さ

丸山さんは自らの歩みを振り返り、夢を現実にできるかどうかを「狂気の有無」と評した。筆者なりにかみ砕くと、〈どこまで自分の好きと才能を妄信できるか〉となるだろうか。

表現者らしい、エッジの立った言葉の後、丸山さんは今度は経営者目線らしい言葉を足した。

「偉そうなことも言いましたが、僕は可愛らしい女の子や植物を描くのは苦手です。漫画のストーリー作りも、そんなに得意ではない」

「それでも、もがき続けた結果、自分が勝負できるスペースを見つけられた。誰にでも評価される場所はあるはず。それは漫画の世界だけでなく、自分のやりたいことに向けてあがく、10代・20代の皆さんにも言えることではないでしょうか」

『TSUYOSHI-誰も勝てない、アイツには』より
©Kyosuke Maruyama・Zoo/Cygames, Inc.
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