成功に近づくための楽観主義とは何か。行動経済学のコンサルティングを行う山根承子さんは「楽観的であればあるほどいい、と煽るビジネス書の教えを『正しかった』と結論付けるのは早計だ。人には自分事か他人事かにかかわらず、全体的に強い楽観がある。ある研究ではベンチャー起業家の楽観度合いが高いほど、収益や雇用の伸びが低いことを実証的に明らかにしている」という――。
※本稿は、山根承子『努力は仕組み化できる』(日経BP)の一部を再編集したものです。
「楽観的に考えるとうまくいく」は本当か
本書では、楽観的な人ほど病気になりにくく、たとえ病気になってしまったとしても治りやすい、という結果を紹介しています。この結果を見ると、やはり楽観主義は「お得」な感じがしてきます。
では、楽観主義は、成功とも関連しているのでしょうか。ビジネス書では、「楽観主義者はなぜ成功するのか」や「楽観的に考えるとうまくいく」という主張をよく見かけます。これは本当なのでしょうか。
ある研究者は、「楽観主義は赤ワインのようなものである」と述べています。「多過ぎると害だが、毎日少しなら健康にいい」という意味だそうですが、これはなかなか本質を突いているように感じます。
つまり、ポイントとなるのは楽観主義の程度で、ほどほどの楽観はいい影響を招きますが、行き過ぎると危険なものになるのです。
まずは健康について見てみましょう。本書では、楽観的なほどがん患者の死亡率は低くなり、心臓バイパス手術からの復活率も高くなることを紹介しています。
しかし反対に、楽観主義が悪影響を及ぼす例も知られています。それは、楽観主義が行き過ぎると、病気に罹患する確率を低く見積もるようになってしまうというものです。