パリ五輪で男子バレーボールは期待されていたメダル獲得にあと一歩及ばなかった。キャプテンを務めた石川祐希選手は五輪後の選手生活をどう見据えているのか。五輪前に石川選手が書いた自叙伝『頂を目指して』(徳間書店)より、一部を抜粋・再編集して紹介する――。
バレーボール男子準々決勝で得点を喜ぶ石川祐希=2024年8月5日、パリ
写真=共同通信社
バレーボール男子準々決勝で得点を喜ぶ石川祐希=2024年8月5日、パリ

バレーのためなら何でも犠牲にできる

僕はバレーボールが大好きだ。

だからバレーボールをしているだけで楽しい。

でも、そんな僕でもときには楽しくない、しんどいと感じることもある。

だけど、どれほどうまくいかないことや、苦しいことがあっても、やっぱり僕はバレーボールが好きで、もっともっと、自分が求める世界へと近づいていきたいと思うから、そのためならば時間も物事も犠牲にできる。

2024年7月、いよいよパリオリンピックが開幕する。

男子バレー日本代表としてコートに立つのは12名だ。

この本を書いている時点で、メンバーはまだ決まっていないけれど、誰が選ばれたとしても間違いなく力のある選手がそろっていると、自信をもっていうことができる。

とはいえ日本代表として結果を得られたわけではない。

ネーションズリーグで初めて銅メダルを獲り、オリンピック出場がかかった予選でその切符を手に入れることができただけだ。

その現実を踏まえたうえで、過信しているわけではなく、冷静に海外の選手と日本の選手を見比べたとしても決して見劣りせず、チームとしても力があると自信をもっていえる。

もちろん、高さという点では圧倒的に劣っているが、簡単に負けないチームになっているというのは、実際にプレーをしていても感じている。

そんな日本代表のプレーやバレーボール自体を「面白い」と感じてくれる人たちが増えているのはとても嬉しい。

日本のバレーは本当に面白い

ハイキュー‼』に代表されるマンガやアニメの影響もあって、日本だけでなくほかの国の方々からも日本のバレーボールを応援してもらえることは、本当にありがたいことだと思っている。

そして何より、日本代表のなかでプレーしている僕自身が、日本代表のバレーボールは本当に楽しいし、面白いと思っている。

プレーしていても全員が楽しんでいるし、それが見ている人たちにも伝わり、結果にもつながっている。今まではなかなか得られなかった理想に近づいているという実感もある。

選手は1人ひとり目標を立てて取り組んでいるし、その過程を楽しめている。だから「個」も強くなるし、チームとしても強くなれる。