引き上げ幅は過去最高になったが…
7月24日、厚生労働省の諮問機関である“中央最低賃金審議会”は、2024年度の最低賃金の目安を全国平均で時給1054円とする答申を取りまとめた。23年度の1004円から50円の引き上げとなり、過去最高の引き上げ額だ。
ただ、最低賃金の国際比較を行うと、わが国の最低賃金の水準は主要先進国を下回っている。1990年以降の約30年間、わが国企業は生産性の向上を実現することができなかった。生産性とは、企業の稼ぎ=付加価値を人件費で割った数字だ。つまり、どれだけの人件費を使って、どれだけの儲けを上げたかを示す数字だ。
今後も賃上げを続けるためには、どうしても生産性を上昇させることが必要だ。企業経営者は、消費者が欲する製品・サービスを、できるだけ高い価格で提供することで付加価値を引き上げることを目指す必要がある。そして、儲けられる分野に経営資源を配分し、相対的に高い付加価値を実現することだ。
政府はそれをサポートするため、国全体の成長戦略を明確に示すべきだ。経済全体で生産性が上昇するか否か、中長期的な賃金と個人消費の回復に決定的な影響を与えるだろう。
上場企業の純利益は3期連続で過去最高
2024年度、加重平均ベースの最低賃金は前年度比4.98%上昇し、1054円に達する見通しだ。1978年に最低賃金の目安制度が始まって以来、最高の引き上げ幅である。その支えの一つの要素は、わが国企業の業績拡大だ。
2024年3月期、国内上場企業の純利益は3期連続で過去最高を更新した。全体の65%の企業の損益が改善した。ウィズコロナからの回復よる需要の改善、世界的な物価上昇による値上げの浸透などで企業業績は拡大した。
業種別にみると、製造業では自動車、建機などの収益は増えた。インバウンド需要の増加により飲食、宿泊、交通、百貨店など非製造業の企業も増益を達成した。円安の進行も企業業績にプラスだ。自動車など輸出企業の業績は、円安によってかさ上げされた。ドルやユーロなどに対して円安が進んだ分、海外の観光客は支出を抑えてわが国での買い物や飲食、宿泊などを満喫できる。