中小企業も内部留保額は増えている

AI分野の成長加速を追い風に、半導体の製造装置・関連部材の分野では設備投資を積み増し高付加価値の創造を目指す企業も増えつつある。中・長期的な国内企業の成長期待を背景に、日経平均株価も史上最高値を更新した。

収益の増加によって、国内企業の内部留保(利益剰余金)は増加傾向だ。2023年3月期の内部留保額は時点で554兆円、過去15年間で倍増した。企業規模別にみると、大企業(資本金10億円以上)、中堅企業(1億円以上、10億円未満)、中小企業(1000万円以上、1億円未満)のいずれも内部留保額は増えている。

経済全体で企業が賃上げを行う実力は着実に高まっている。政府は賃上げ機運の定着に、大手企業に下請の中小企業の価格転嫁交渉を公正に行うよう要請した。政府は、企業に内部留保を活用して、積極的な賃上げを行うよう求めているといえる。こうして33年ぶりの賃上げ率(5.10%)を達成した春闘に続き、最低賃金も大幅に上昇した。

韓国の最低賃金1083円にも届いていない

最低賃金の引上げ自体は重要だが、わが国の水準は米欧などに見劣りする。それは、独立行政法人労働政策研究・研修機構が発行する『データブック国際労働比較』から確認できる。

2019年と2024年(ともに1月時点)の最低賃金を比較すると、わが国の上昇率は15%だった。同じ期間、英国は33%、ドイツは35%、オーストラリアは23%だ。韓国の最低賃金も18%伸びた。(いずれも時給基準、現地通貨ベース)。

2024年1月上旬の対円為替レートで円に換算すると、足許の最低賃金は英国で約1919円、ドイツは1965円、韓国は1083円だ。7月12日、韓国の最低賃金委員会は2025年の最低賃金を本年から1.7%増の1万30ウォン(約1160円)に引き上げる方針を示した。

米国は、連邦レベルの最低賃金と、州の最低賃金制度を併用している。2024年1月、ニューヨーク州は最低賃金を16ドル(2312円)に引き上げた。前年の15ドルから6.7%増だ。対象地域はニューヨーク市、ウエストチェスター、ロングアイランドである。