債務ゼロになる一方、高額の税金が発生
図表2のケースで見ていきましょう。
ペアローンを組んだAさんとBさんご夫妻の現時点での債務残高はAさん3000万円、Bさん2000万円です。従来型の団信に加入している場合、Aさんに万が一のときはBさんの債務が残り、Bさんに万が一のときはAさんの債務が残ります。
一方、連生団信に加入していると、Aさんに万が一のときもBさんに万が一のときも債務はゼロになりますが、死亡にも高度障害状態にも該当しない人に対して免除された債務は、その人の一時所得とみなされます。
たとえば、Aさんに万が一のことがあった場合、Bさんが支払いを免除された2000万円はBさんの一時所得となり、所得税と住民税の課税対象となります。一時所得の計算式は以下の通りです。
Bさんの課税対象となる金額は、「(2000万円-経費0-50万円)×1/2=975万円」です。975万円の所得税率は33%、住民税の所得割は10%ですから、419万円の税金を納めることになります。一時所得は総合課税の対象ですから、給与所得や他の所得と合算して税額を決定します。給与が高い人はさらに税率が上がるかもしれません。
生命保険に加入して繰上返済する方法も
いくらローンがなくなるとはいえ、手元にお金が入ってくるわけではありません。その時点での債務残高にもよりますが、高額の借り入れをしている場合、納税のために数百万円を捻出することになるかもしれません。
このように考えてみると、無理に連生団信にこだわらず、一般の団信で契約をし、カバーされない部分は個別に生命保険に加入するという選択肢が有効になってきます。
たとえば、Aさんが2000万円、Bさんが3000万円の生命保険に加入し、お互いを死亡保険金受取人に指定しておくと、どちらかに万一のことがあった場合も、残った債務を死亡保険金で繰上返済することができます。
図表3のように、契約者と被保険者を同一にし、受取人を配偶者にしておくと、死亡保険金は相続税の課税対象になりますが、「500万円×法定相続人数」の非課税枠がありますし、相続税の配偶者控除など、各種の控除がありますから、一時所得ほどの税金がかかることはありません。