本書は、これまで日本が避けてきた非常に重いテーマを真正面から取り上げている。石油危機に端を発した1973年の“転機”により、「20世紀システム」とM・ウェーバーらがいう意味での「官僚制」からなる「近代」は終わってしまったと結論づけ、「代わりに立ち現われるのは、先進国も途上国も、そしてその内部の諸個人も自助努力を求められ、そして脱落すれば『置いてきぼり』をくらう、『新しい近代』である」(77ページ)と指摘する。90年にバブルが崩壊し、それを克服するかにみえた小泉構造改革も、リーマン・ショックで幻想だとわかり、ますます閉塞感が強まった。

社会学者が著した本書は、現在の経済現象の水面下で何が起きているのを理解するうえで多くの示唆に溢れている。たとえば、先進国の金利が74年にピークをつけて一斉に低下傾向に入ったのは、「近代」の終焉と大きな関係があるということを教えてくれる。また、90年代に「『超安定社会』という自画像を支えていた3つの要素がこの時期に共通して、終焉」(204ページ)したという指摘からは、なぜ日本の一人当たり賃金が同じ時期にピークを迎え、その後下がり続けるのかが理解できる。