犬好きや猫好きには悪い人はいない、と聞いたことがある。やや誇張した表現かもしれないが、インターネットやゲームのバーチャル・リアリティーしか興味のない人に比べれば、はるかに人間味がある。そもそもヒトも動物なのだから、動物に関心を持つことは人類生存のうえで大事な特質であると思う。

本書は生き物たちの興味深い行動にまつわるエッセイで、京都大学で長らく動物行動学の研究を行ってきた著者が身近な動物の生きざまの本質を解説する。動物にはそれぞれ異なる生き方があり「言い分」があるのだ。生物の行動にはすべて意味があると言ってもよい。数ページほどからなる短章の一つ一つに、彼らが何十万年もかけて獲得した知恵の数々が解き明かされていく。