「お陰でなかなか楽しい、いい人生だったよ。ありがとう。みんな元気でね。……ガクッ」

月並みだがこんな言葉を残して家族に見守られながら逝きたいと思っている。でも、このささやかな願いは叶うだろうか。私が見送ってきた人たちは、皆最期はチューブにつながれ、口元も酸素マスクで覆われていて、言葉を残すどころではなかった。冒頭のような死に方は映画やドラマの中でしか見たことがない。

本書は、鑑真から越路吹雪まで、さまざまな時代、ジャンルの100人を選び、その最期の言葉を紹介している。著者が分類しているように、この種の言葉は辞世の句や遺書などで残っているもの、死の間際に発した言葉、生前、特に晩年のその人の人生観をよく表している表現など、出所はマチマチで本書でもそれらは混在している。