母国でのシェアもついに5割を下回ったテスラ
2024年1~3月期、テスラの世界販売台数は前年同期比9%減少した。4~6月、ホームカントリーである米国でのシェアも低下した。同社の米EV販売台数のシェアは、四半期ではじめて5割を下回った。1~6月期でみても販売台数は前年同期を下回った。
それとは対照的に、米国市場でフォード、トヨタ(レクサス含む)、韓国の現代自動車(起亜を含む)などの販売台数は増えた。充電インフラの不足、航続距離の短さなど新車販売に占めるEVシェアは8%程度と伸び悩んでいる。
そうした状況下、日米の主要メーカーは選択肢の豊富さなどを訴求し、テスラからシェアを奪った。起亜に関しては、低価格戦略が功を奏したとみられる。また、米国の自動車市場全体でみると、わが国自動車産業が比較優位性を持つHVの需要は増えた。航続距離、中古車市場での値崩れが少ないことが再評価されたのだろう。
欧州市場でもテスラは苦戦した。一方、1~5月期、欧州市場でもトヨタとレクサスのHV、PHVなどは人気を獲得し販売台数は増えた。HVの製造技術に後れをとった、フォルクスワーゲンなど欧州大手の販売は伸び悩んだ。現代自動車の販売も停滞気味だ。
テスラに代わって中国勢が日本を猛追している
中国市場では、BYDや広州汽車集団傘下の広汽埃安新能源汽車(AION)などが、低価格の新モデルを投入しテスラからシェアを奪った。中国政府は、国有自動車メーカー3社(中国第一汽車集団、東風汽車集団、重慶長安汽車)のEV開発、バッテリーなど国産部品調達を支援する方針だ。
スマホ・家電大手の小米(シャオミ)もEVを投入した。2023年、中国の自動車メーカーは、年間の販売台数で米国ブランドを抜いたようだ。トップの日本勢、2位の欧州ブランドを中国が猛追している。
足許、中国では個人消費の停滞や過剰生産能力で、EVや車載用バッテリーの供給能力は需要を上回っている。それでも、主要メーカーは生産能力を増やしている。中国は、EVなど電動車、車載用バッテリー、太陽光パネルなどの輸出を伸ばし、景気の下支えにつなげたいのだろう。
現在、BYDなどの中国メーカーは、アジア、南米、ロシア、アフリカなど新興国市場向けの輸出・現地生産を増やしている。新興国の政府としても、中国企業の直接投資はEVやバッテリー分野での製造技術の移転、リチウムなどの鉱山開発、インフラ整備に重要だ。