日本が得意とする「PHV」にBYDも参入

BYDはEVに加え、PHVの供給体制も拡充した。5月下旬、BYDは新しいPHVシステムを発表した。100キロ走行時のガソリン消費量は2.9リットル。トータルの航続距離は2100キロに達するようだ。

年初来、BYD以外の中国自動車メーカーによるPHVモデルの発表も相次いだ。中長期的に世界経済にとって脱炭素は避けられない。電動車シフトにPHVの重要性は高まるだろう。中国メーカーはEVとPHVなどの組み合わせで、新興国の自動車需要に対応しようとしているようだ。PHVに搭載するエンジンの製造技術は、主にわが国など先進国企業から移転したとの見方も多い。

わが国の自動車メーカーが高いシェアを誇ったタイなどで、中国勢による値引き競争も起きた。アフリカでは車載用バッテリーなどの素材である銅やコバルト鉱山を開発するため、中国企業が権益を獲得するケースも増えた。

求められているのはEVではなく「消費者が欲しい車」

中国の自動車メーカーは、EV、PHVなど電動車の選択肢を増やし、川上レベルからサプライチェーンを整備して価格競争力の向上を図っている。BYDはトルコで工場建設を発表した。それは、EUの関税を回避して欧州の電動車需要を取り込むための方策だろう。中国自動車メーカーは、新興国から欧米向けの輸出、主要先進国での直接投資も増やし、グローバルにシェア拡大を目指すと予想される。

ウクライナ、キエフを走る赤いプリウス
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米国でトヨタのHVやPHVの需要は増えた。GMはPHV再導入の可能性に言及した。中国自動車メーカーはEVに加え、PHVの供給力も重視し始めた。EVなど特定モデルではなく、消費者が欲しがる車を迅速に供給する力が必要とされている。自動車メーカーの実力が問われているといってもよい。

脱炭素、物価の高止まりと景気の減速懸念、AIの台頭など、世界経済の環境変化は大きい。主要自動車メーカーにとって、エンジン車、EVなどを迅速に供給するために、IT技術を使うことは重要になっている。また、AI業界の成長で自動運転の研究開発も進み、自動車の機能も変わると予想される。