基本は「食中毒予防の3原則」
では、夏だからといって特に食中毒に気をつける必要はないのでしょうか。そんなことはありません。気温や湿度の高い夏は細菌にとって繁殖しやすい条件が整うため、細菌性食中毒が起こりやすいのは間違いありません。食中毒予防の基本を学んでしっかり予防しましょう。
食中毒予防を学ぶ際にとても役立つのが、厚生労働省も提唱している「食中毒予防の3原則」です。一つずつ、どういうことなのかをみていきましょう。
「つけない」
食中毒の原因になる有害な微生物を食品に付着させない、洗い落とすことで予防します。原因になる細菌やウイルスがなければ食中毒は起こりません。基本であり、最も有効な方法です。
「ふやさない」
どんなに気をつけていても、食中毒の原因となる細菌を食品から完全除去することは困難です。細菌は温度と栄養と水分の3条件が揃うと、あっという間に増殖します。調理した食品はすぐに食べるか、時間をおくときは低温で保存するなどして細菌を増やさないようにしましょう。夏場の食中毒予防では、特に重要なことです。
「やっつける」
多くの食中毒の原因となる細菌やウイルスは熱に弱いため、食べる前に十分に加熱してやっつけることが重要です。やっつけた後には再び「つけない」ようにしましょう。
3原則が通用しない食中毒1
ブドウ球菌、腸管性出血性大腸菌
こうして「食中毒予防の3原則」を守れば、多くの食中毒を防ぐことができます。でも、中には原則が通用しない厄介な食中毒も存在します。以下では、特に注意が必要な食中毒とその対処法を紹介しましょう。
人の手や鼻腔、特に傷口に生息するブドウ球菌は、エンテロトキシンという毒素を産生し、食中毒の原因となります。黄色ブドウ球菌の保菌率は40%ほど。手洗いが不十分だったり、化膿した傷のある手で食品に触れることで汚染の原因になります。特に30〜37度で増殖しやすく、食塩濃度が高い食品でも繁殖できるので、つくり置きの料理やおにぎりによる事故が多く、注意が必要です。一度つくられたエンテロトキシンは加熱しても壊れないため、毒素を作る前にやっつけないと効果がありません。感染すると3時間程度で発症し、吐き気や、嘔吐、下痢が起こります。
O157などの腸管出血性大腸菌は健康な牛の腸内に生息していて、食肉や内臓などの汚染率が高いのが特徴。内臓の場合は表面だけでなく内部にも菌が存在し、非常に少ない菌数で発症した例もあるため「つけない」の効果は限定的で、細菌が増えなくても感染するため、病原大腸菌が付着している可能性があるものは生で食べないことが大切です。
最大の予防策は「中心までしっかり加熱(中心温度75度以上、1分間以上かそれと同等以上の加熱)」すること。また、生肉に触れたトングや箸などは取り分け時に使わないようにしましょう。野菜に付着していることもあるため、特に生で食べる場合は飲用水で十分に洗い流したり、決められた濃度の塩素で消毒を行うことが大切です。腸管出血性大腸菌は血便を引き起こし、子どもや高齢者では重症化する可能性が高く、腎障害から死に至ることもあるとても危険な食中毒です。