3原則が通用しない食中毒2
カンピロバクター、ウエルシュ菌、ノロウイルス
動物の腸管内で生活している細菌で、特に鶏肉の保菌率が高いことが知られています。病原大腸菌と同じように少ない菌量でも食中毒を起こすことがあるため、「増やさない」が通用しません。酸素の少ない環境が増殖に適していて、食品や料理の中で増えることはほとんどありません。鶏肉から他の食品へ汚染が広がるのを防ぐこと、十分に加熱することが大切です。透き通ったピンク色の部分が残った鶏肉は加熱不十分と考えてください。潜伏期間は2〜7日と比較的長く、下痢、腹痛、嘔吐と37〜38度の発熱が主な症状。発症後に神経障害である「ギラン・バレー症候群」を起こすことがあるので要注意です。
動物の腸管内や土など自然界のさまざまな場所に存在しているため、「ついている」を前提に調理しましょう。43〜45度と比較的高温を好み、酸素の少ない環境で繁殖し、高温で加熱すると「芽胞」という状態に変化して熱に耐え、温度が下がれば再び増殖します。ですからカレーや煮込み料理を常温で放置すると、ウエルシュ菌の繁殖しやすい温度帯が維持され、食中毒を起こす量まで増加します。すぐ食べない場合は、鍋ごとシンクで冷たい水につけ、酸素を含ませるようかき混ぜながら冷やすと増殖を抑えることができます。また一度増えてしまっても、食べる前に全体が沸騰するまで再加熱することで安全に食べられます。潜伏期間は6〜18時間と短く、下痢や腹痛が主症状です。発症後1〜2日で回復することが多いですが、高齢者では脱水による重症化リスクもあります。
冬場に牡蠣によって起こるイメージですが、季節に関係なく発生しています。ノロウイルスが少しでも付着していると感染リスクがあり、ウイルスが頑丈で胃酸でも壊されないため、非常に少ない数でも発症します。感染者の糞便や嘔吐物、タオルの共有などで容易に広まります。熱に弱いため十分な加熱を行うことが重要です。ノロウイルスにはアルコールが効かないため、念入りな手洗いできれいに洗い流し、衛生的なペーパータオルなどで拭き取ることが「つけない」ためのコツ。患者の嘔吐物は、次亜塩素酸ナトリウムを含む漂白剤で消毒しましょう。潜伏期間は1〜2日程度で、激しい吐き気と嘔吐、下痢を引き起こします。
夏は特に「つけない」「ふやさない」
さて、高温多湿の日本の夏は、病原体を「つけない」「ふやさない」ことが特に大切です。具体的には、以下のことに気をつけましょう。
食品購入時:要冷蔵の食材は最後に購入し、長く持ち歩かないようにしましょう。すぐに帰宅して冷蔵庫に入れられない場合は、保冷バッグと保冷剤、保冷用氷などを活用してください。
調理前:まずは流水でしっかり手洗いを。生野菜には食中毒細菌が付着している前提で、同じく流水で十分に洗いましょう。
調理中:生肉など食中毒細菌が付着している恐れのある食材に触れたら、そのたびに手を洗い、使い捨てのペーパータオルで拭いてください。まな板は生肉などの加熱が必要な食品用、そのまま食べる食品用の2つを用意して使い分けましょう。加熱が必要な食品に触れた包丁やまな板などの調理器具はしっかり洗浄し、熱湯をかけるなどしてください。
保存や保管:調理完了後すぐに食べるのが一番安全ですが、難しい場合は温度管理と細菌汚染予防を徹底してください。温かい料理は加熱調理が終わったら蓋やラップをし、冷蔵庫にいられる温度になるまで氷や保冷剤を使って急速に冷やします。常温や冷たい料理は、すぐに冷蔵庫へ。
誰にでも覚えのある急な腹痛や下痢や嘔吐は、もしかしたら食中毒によるものかもしれません。食中毒は診断した医師が保健所に届け出ることで統計に反映されるため、実際の食中毒患者数はその何十倍も存在すると考えられています。食中毒は、私たちが考えている以上に身近な存在だと考えてください。
特に高齢者や小さな子どもは、下痢や嘔吐による脱水症状から重症化することもありますので、衛生管理のポイントをしっかり守って食中毒予防に努めましょう。