「受験も塾も必要ない。俺は絶対に出さない」

A子さんが離婚を強く考えるようになったのは、長男の進路がきっかけでした。

長男が中学受験をしたい、塾に通いたいというので、A子さんから夫に、塾代を出してもらえないかと聞くと、「受験も塾も必要ない。俺は絶対に出さない」と言われたそうです。

さらに長男の目の前で、近隣の塾に電話をかけ始めて、「うちの子どもが申し込んでも絶対に通わせないでください」と言ったのです。A子さんが「そんなひどいことしないで」と言うと、夫は「二度とこんなことを言わないように、お仕置きで電話をかけたふりをしただけだ」と笑いながら言いましたが、塾に通うことを強く反対されて、長男はショックを受けました。

この分だと中学の学費ももちろん出してもらえない、高校や大学の学費も、長女の学費も……と考えると、夫と結婚生活を続けられる気がしなくなってしまったということでした。

「子どものお金は無駄遣い」

私はA子さんから、離婚に向けた手続きの依頼を受けることになり、その後A子さんと子どもたちは実家に帰って別居生活を始めました。

私から夫に、離婚したいこと、離婚までの間の婚姻費用(生活費)を払ってほしいと連絡をすると、夫はどちらも拒否しました。

交渉の余地がなさそうなので、離婚調停と婚姻費用分担調停を申し立てると、夫は弁護士を立てず、一人で調停にやってきました。

夫は婚姻費用を払っていないので、まずは婚姻費用の額を決めることになります。婚姻費用は夫婦の収入と子どもの人数で決まり、A子さん夫妻の場合、夫が約21万円を支払うことになります。

……ということを告げられると、夫は激しく抵抗しました。「家賃と水道光熱費以外は払わないというルールでやってきたのに、出て行った妻子の生活費を払うのはおかしい」というのです。そして、これまでに払った家賃や水道光熱費を表にして提出してきたのですが、「そういう話ではありませんよ」と調停委員に説得されて、夫はしぶしぶ21万円を払うようになりました。

次は離婚についての話し合いに移り、こちらが「夫は子どもたちに関する費用を全く払ってくれなかった」と主張すると、夫は再度、家賃と水道光熱費の表を提出して、「自分はこんなに払ってきた」「子どものお金は無駄遣いだ」「妻の言い分は身勝手でおかしいから家に帰ってくるべき」と言いました。

しかし夫は、子どもたちの費用を払っていないことを認めていますし、表を見ると、収入に比べて明らかに出費が少ないことがわかります。

なにより、「子どもたちのお金を今後も一切払わないという姿勢のままでは、奥さんが帰ってくるのは難しいですよ」と調停委員に言われると、夫は離婚に応じると言い出しました。

離婚届
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