サッカーでは変更率は9割超、野球とアメフトは5割程度
このロジックで考えると、ビデオ判定をする人が審判本人でない場合は、ネガティブフレームが適用されないため、判定が覆る可能性が低くなると考えられます。
今回は、簡単な比較としてサッカーのOFR と野球(メジャー)(※2)、アメフト(NFL:ナショナルフットボールリーグ)(※3)のチャレンジ(ビデオ判定)を比較してみます。
※2:Close Call Sports.(n.d.).Replay stats.
※3:Football Zebras.(2020). 2020 Replay Statistics.
野球、アメフトのチャレンジでは、1度目の判定をした審判とビデオ判定をする審判が異なっています。そのため、サッカーに比べてより中立的な視点でビデオ判定ができると思われます。
この3つの競技を比較した結果が次の表です。野球やアメフトのチャレンジでは判定が覆る可能性が5割ほどでした。サッカーの9割超と比べるとかなり低い値であることがわかります。
もちろん、サッカーと野球、アメフトでは、競技のルールも違いますしビデオ判定のシステムも異なります。
特に、サッカーでは重大な事象についてすべてチェックするのに対して、野球・アメフトではチームの監督が異議をとなえた場面のみとなっています(ただし失敗するとペナルティがあるため乱用はできません)。このような条件の違いがあるため、この3つの競技の比較は参考程度のものと受け止めてください。
映像で再確認すれば正確無比な判定ができるわけではない
一流の選手や審判のいるプロリーグでこれだけの違いがでるというのは驚きです。サッカーのOFRではネガティブフレームによって判定が覆りやすい可能性が否定できないといえるでしょう。
主審がビデオを再確認するという方法は、判定の一貫性を担保するという意味では魅力的なプロセスではありますが、ネガティブフレームによる認知バイアスを生み出す温床になっているかもしれません。
より厳密に検討するためには、サッカーのVARにおいて主審がOFRする場合と別の審判がOFRする場合でどのように結果が異なるか比較する必要があります。この比較で、よりよいサッカーの判定方法について議論を進めることが期待されます。
スピーディーなスポーツ場面を映像で再確認すれば、正確無比な判定ができるように思われます。しかし、サッカーのOFRではネガティブフレームの影響がみられる可能性が示されました。