VARでリヴァプール遠藤の走路妨害がオフサイドに

2023年の8月、サッカー日本代表としても活躍する遠藤航は、イングランドの超ビッグクラブであるリヴァプールに移籍しました。チームの心臓として大車輪の活躍をみせた遠藤は、イングランド国内クラブのトーナメント戦であるカラバオカップ(EFLカップ)の優勝にも貢献しました。

そのカラバオカップの決勝で、リヴァプールにとって不可解な判定がありました。

試合は60分、リヴァプールはセットプレーから主将のファン・ダイクがヘディングでネットを揺らしました。ゴールのように思えましたが、このプレーにビデオ判定をするVAR(ビデオアシスタントレフェリー)が介入。ゴール直前、オフサイドポジションにいた遠藤が相手のディフェンダーの走路を妨害した疑いで、主審は試合映像を再確認(OFR:オンフィールドレビュー)しました。結果、遠藤がプレーに関与したとしてオフサイドに。ゴールは取り消しとなりました。

このような走路を妨害するプレーはよく行なわれますし、ボールに触っていない遠藤がオフサイドになることにも違和感があり、ゴールを取り消すことはやりすぎなのではないかという声が相次ぎました。

試合は結局、延長後半に主将のファン・ダイクがヘディングでネットを再度揺らし、リヴァプールが優勝。優勝できたからよかったものの、もしこれで優勝を逃そうものなら、疑惑の判定として後世まで語り継がれる判定変更になったかもしれません。

もちろん、VARによって誤審が減ることは好ましいことです。

しかし、この遠藤のオフサイドのように、VAR(厳密にはOFR)によって判定が不当に覆りすぎているのではないか、という問題が知られています。この判定変更をフレーミング効果の視点から考えてみましょう。

VARでも最終判定を下すのはあくまで主審

サッカーにはフィールドにいる審判員とは別に、VARという映像を見ながらフィールドの審判をサポートする役割の審判員がいます。

VARはすべてのプレーに介入するわけではありません。

「得点」「PK」「退場」「警告の人間違い」の4つのプレーにおいて明白な間違いや見逃された重大な事象があるときのみ、VARは介入をします(③)。この明白な間違いというのは、10人中8人以上が反対するような場面を意味するので、覚えておいてください。

VAR の介入方法は2つあります。主審の主観的な判断が必要な場合(例:タックルの強さ)は、OFR(オンフィールドレビュー)といって主審がモニターで再確認します。主観的判断が不要な場合は、VARのみで検討します(④)。以上のプロセスを経て、主審が最終判定を下します。

VARで重要なのは、あくまで最終判定を下すのはVARではなく主審であることです。OFRで映像を再確認したときに、主審は必ずしも判定を覆す必要はありません。サッカーの主審は1試合のなかで判定の基準が一致することが求められます。VARの助言が自分の基準と一致しないと判断したら、判定を変更しなくてよいのです。