ジェンダーレスの時代に求められる男子マネージャー

男子の活躍を女子が支える――。

そんな“昭和の常識”は令和の今もなお引き継がれている。スポーツの世界、例えば、部活もそのひとつだろう。中学・高校では野球、サッカー、バスケなどの男子チームに複数の女子マネがいることが多く、男子選手を練習や試合で献身的にフォローしている。

一方、女子チームはどうか。そこに、男子マネの姿はまずいない。

運動する前に手を積み重ねている女性の底面図
写真=iStock.com/dusanpetkovic
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部活顧問をするキャリア25年超の高校教員に聞くと、男子生徒のなかで「女子部のマネージャーをしたい」という声は他校を含めこれまで一度も出たことがないという。ジェンダーレスの現代にもかかわらず、なぜ、このような昭和スタイルが続くのか。

高校、大学のマネージャー事情

筆者(47歳)は出身高校が男子校だったこともあり、女子マネがいる学校には「負けられない」という気持ちが強かった。それは女子マネへの憧れへの裏返しで、人気スポーツ漫画である『タッチ』や『スラムダンク』の影響もあった。当時も今も、女子マネの存在が選手のモチベーションやスキルアップに貢献する作品は数多く、実際、効果があった。

所属していた陸上部は部員全員が選手で、専任のマネージャーはいなかった。しかし、故障で走れない選手がタイムを計測するなど、マネージャーの役割を担う者はいた(強豪校の場合、途中からマネージャーになる転身する元選手もいる)。

陸上部の場合、強豪校の男子チームに女子マネはほとんど見たことがないが、野球やサッカー、バスケ、ラグビーなどは男子チームに女子マネがいるのはほぼスタンダードだ。特に甲子園ではスコアラーやノッカーへのボール渡しなどをする女子マネの存在がクローズアップされる機会が多い。

野球、サッカー、ラグビーは女子部がない学校が多いので、そのスポーツが好きな女子が裏方として活動したいのだろう。一方、バスケやバレーボールなどには女子部もあるが、プレイヤーではなくマネージャー志望の女子は男子チームを支える側に回る印象だ。

では、男子マネはどうか。高校では「マネージャー=女子の役割」というイメージが強いせいか、男子はそもそも「マネージャーをやりたい」という発想があまりないようだ。高校の運動部では女子チームに男子マネはいないし、男子チームでは故障中の男子選手がマネージャーの役割を担うか、選手をあきらめた男子がマネージャーを務める。

大学におけるマネージャーの役割は多岐にわたる。陸上部でいえば、給水の準備やタイムを計測するだけでなく、練習日誌や試合結果をパソコンに記録。試合のエントリーや、対抗戦や記録会などの大会運営もマネージャーが中心に動いている。さらにスタッフと選手の間に立ち、チーム全体をマネジメントする役割も担う。下級生からすれば上級生の男子マネージャーは「コーチ」に近い存在ともいえるだろう。裏方マネージャーは選手以上に部に関わる時間があり、アルバイトを禁止しているチームも少なくない。

そのため、大学によってはマネージャーとして入部することを条件に、推薦入試で入学する者もいる。それほどチームにとってマネージャーの役割は重要なのだ。

男子マネの入部がない箱根駅伝の大学強豪校では2年生の時点で、選手のなかからマネージャーを1人出すチームが多い。マネージャーに指名された者は、「今でも走れるものなら走りたい」という思いを抱えながらチームをサポートしていくことになる。