なぜ女子チームに男子マネがいないのか

女子チームに男子マネがいない理由については、そもそも「マネージャーをやりたい」と発想を持つ男子が少ないことに加えて、別の理由も存在するようだ。

高校、大学、実業団で活躍した女子の駅伝ランナーに聞くと、「女子選手に何かあるのが心配で、(年齢の近い)男子マネを入れたくないのかもしれません」と答えた。女子選手を預かる監督としては恋愛対象にもなりうる同世代の男性を選手に近づけたくない意識もあるだろう。これについては理解できる気もするが、女子マネのいる男子チームも同じことで、結局、部内ルールを守るということは重要になるだろう。

とすると、女子チームの男性監督が珍しくないように、今後は男子マネを採用する女子チームが出てきても不思議ではない。いや、出てくるべきだろう。

かつては「女性」の職業という認識が強かった看護師やキャビンアテンダント(CA)も男性が増えている。厚生労働省の調査では、男性看護師は2012年に6万3321人(全体の6.2%)だったのが2022年には11万2164人(同8.6%)まで増加しているのだ。

男性客室乗務員
写真=iStock.com/Svitlana Hulko
※写真はイメージです

CAでは重い荷物の出し入れや乗客の介助など力が必要なシーンでは男性CAの存在が頼もしくなる。また乗客からの女性CAに対するセクハラ行為を防ぐなど、客室内の保安要員としも男性の方が役立つ可能性が高い。

運動部のマネージャー業務も男性がより活躍できるスキルがあるはずだ。

実業団では選手を指導するコーチとは別に男性のランニングコーチを雇っているチームが少なくないが、前出の元駅伝選手の出身大学では女子選手を引っ張る役割の男子選手がいたという。選手からすれば男子選手は「目標」となるだけでなく、女子だけのチームとは少し雰囲気が違ったものにできたようだ。

「男子がいることで、女子選手内でいじめのようなトラブルが起きにくかったと思います。異性の目があることで、女子選手間のパワーバランスの偏りなども回避できるのかもしれません」

プレイヤーとして活躍できなくても、マネージャーとして力を発揮できるタイプもいる。レギュラー選手でなくても、競技に対する情熱があり、知識が豊富な者もいる。今、チームを勝利に導くためのデータ分析は各競技に必須だが、男子の中にはそうした分野を得意とする者も少なくない。これまで女子が中心だった運動部のマネージャーに男子も参加すれば予期せぬ化学反応が起き、女子選手の成長につながる可能性は大きいのではないか。