駅伝でレース展開をひっくり返すような大活躍する外国人留学生は多いが、そんなシーンが激減するかもしれない。高校駅伝のルール変更で留学生が走っていいのが「最短区間(3km)」のみに限定されることになったのだ。スポーツライターの酒井政人さんは「留学生と切磋琢磨して、日本人選手は成長してきた。外国人を排除する動きは、日本の長距離界にとってマイナスだ」という――。
全国高校駅伝の女子2区、立命館宇治の大西桃花(左)を抜き、先頭に立つ仙台育英のデイシー・ジェロップ。2023年12月24日、京都市内[代表撮影]
写真=時事通信フォト
全国高校駅伝の女子2区、立命館宇治の大西桃花(左)を抜き、先頭に立つ仙台育英のデイシー・ジェロップ。2023年12月24日、京都市内[代表撮影]

高校駅伝は純ジャパチームが勝てればいいのか?

全国高校駅伝は毎年12月下旬に開催されている。冬の駅伝シーズンの目玉で、テレビ中継もされる。ファンにとっては将来の箱根駅伝のエース候補などを見いだすいい機会でもある。

この大会の規定が、今年から変わる。外国人留学生の起用が「最短区間(3km)」に限定されることになったのだ。駅伝を中心とした取材をしている筆者からすると、この変更に強い違和感を抱かざるをえない。“駅伝の国際化”に完全に逆行しているからだ。

全国高校駅伝に外国人留学生が参加するようになったのは1992年大会からだ。ちょうど筆者が高校1年生(陸上部)の時で、本当に衝撃的だった。

当時は日本人高校生の5000mのタイムは13分台が1人しかいなかった時代。ケニアからやってきたダニエル・ジェンガとジョン・マイタイという仙台育英高(宮城)の留学生コンビが入学直後の大会で14分08秒台(当時の高校歴代4位相当)をマークした。

2人のケニア人留学生を擁した仙台育英高は、その年の全国高校駅伝に初出場で4位。翌年(93年)は最長区間(10km)の1区でジェンガが抜け出すと、3区のマイタイも区間賞。そのまま独走した。この年、仙台育英高は男女各2人のケニア人留学生を起用して“アベック優勝”を果たしている。

ケニア人留学生のパワーがあまりにも強烈だったこともあり、全国高等学校体育連盟(高体連)は1995年からインターハイの留学生枠をチームの20%前後までに規制。高校駅伝においても外国人留学生選手は「エントリーは2人以内として出場は1人」とした。

その後も2007年大会まで“花の1区”は、ケニア人留学生が区間賞を奪い続けた。2008年からは男女とも外国人留学生選手の起用は、「1区を除く区間」という規定に変更。それでも“留学生パワー”は衰えず、全国各地にケニア人ランナーがいる時代になった。

昨年度(2023年)の高校100傑は男子5000mで14人、女子3000mで13人の外国人留学生の名前を見つけることができる。なおインターハイの男子5000mは、ケニア人留学生が1993年から30年連続で優勝をさらっているのだ。

ちなみに長距離種目以外で、外国人選手の姿はほとんど見当たらない。日本でファンも多い「駅伝」という人気種目で、校名をPRしたい学校経営者側の思惑が影響しているといえるだろう。

高体連は2019年と2021年に陸上競技専門部の加盟校に対して、意見を求めるアンケートを実施。留学生区間のさらなる制限に過半数が賛成したという。しかし、それは当然の結果かもしれない。留学生が増えているとはいえ、留学生のいないチームのほうが多いのだから。