在宅看取りの場合は告知義務がない

③誰かに看取られた自然死

室内で死亡しても、その物件の価値がマイナスにならないケースもあります。それが、家族などに看取られながらお亡くなりになるケース(在宅看取り)です。

この場合、国土交通省によるガイドラインにおいても告知義務はないため、事故物件には該当しません。価格・賃料への影響は0~5%未満の下落率と考えてよいでしょう。

【図表3】事件等の経過年数と裁判例における心理的瑕疵の判断の状況
出所=『悪魔の不動産鑑定』(クロスメディア・パブリッシング)

50年後に殺人事件があったと発覚したケースも

不動産業者が告知義務を回避する方法はないのでしょうか。

かくいう泰道が所有している物件で自殺があった際に、「どうにか価格が落ちない方法はないか⁉︎」と資料を読み漁った経験があります。

泰道征憲、中瀬桃太郎『悪魔の不動産鑑定』(クロスメディア・パブリッシング)
泰道征憲、中瀬桃太郎『悪魔の不動産鑑定』(クロスメディア・パブリッシング)

結論、ないです。告知事項に関する法律や判例を読み漁り、数多の不動産会社にヒアリングしてみましたが、ダメでした……。

最終的には「建物を取り壊せば告知義務はなくなるのでは?」と考えたのですが、この場合も「隠れた瑕疵」の存在が認められる場合があり、隠していると後々トラブルになる可能性があります。

事故物件の判例については国土交通省がまとめてくれているのでご紹介しましょう。「耳目を集めた殺人事件」が事件から50年後に心理的瑕疵として認めた以下の事例なんかは、ゾッとする事件ですね。

心理的瑕疵の有無・告知義務に関する裁判例について(2020年2月5日)

約50年前に本物件上の建物で凄惨な殺人事件が発生、その後建物は取り壊され40数年にわたり放置されていた。本件事件の存在を知った買主は、その事実を知っていた売主・仲介業者に対し、説明義務違反を理由として損害賠償請求した。

【裁判所の判断】
農山村地帯における本件事件は、約50年経過していたとしても近隣住民の記憶に残っていると考えられ、買主が居住し近隣住民と付き合いを続けていくことを思えば、通常保有すべき性質を欠いている隠れたる瑕疵であるとし、売主らは当該瑕疵を告げなかった説明義務違反があることから、売主の請求につき、売主に対しては信頼利益の損害として売買代金を、仲介業者に対しては仲介報酬等を認めた。

(東京地裁八王子支部H12.8.31)

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