イライラ、モヤモヤの原因はセロトニン不足

たとえば、セロトニンという脳内物質は精神を安定させる働きを持っています。ストレスが続くとそれを鎮めるために多量に消費され、脳内はセロトニン不足になります。ノルアドレナリンとドーパミンの分泌をコントロールしていたセロトニンが足りなくなると、この2つの脳内物質の分泌が制御できなくなってしまいます。

・ ノルアドレナリンが不足⇒「どうでもいい」など、物事へのやる気や興味が低下。
・ ノルアドレナリンが過剰⇒「いいかげんにしろ」と周囲に攻撃的になったり、「心配で眠れない」と不安や恐怖を抑制できなくなったりする。
・ ドーパミンが不足⇒「何もしたくない」と意欲が低下。
・ ドーパミンが過剰⇒「もっとやれ!」と行動がいきすぎたり興奮状態を抑えられなくなったりする。

セロトニンが不足しているだけで、このような影響が出てきてしまうのです。

もしネガティブな感情から抜け出せずにいるとしたら、脳内の神経伝達物質のバランスが乱れているのかもしれません。「ちょっとセロトニンが足りないのかも……」などと視点を変えて考えてみると、気持ちを切り替える方法も探しやすくなるでしょう。

肘をついて考える女性
写真=iStock.com/maruco
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ネガティブ感情になりやすい人、なりにくい人

ネガティブ感情に特にかかわりのある脳内物質が、セロトニンとノルアドレナリンです。

伊藤拓『精神科医だけが知っている ネガティブ感情の整理術』(ハーパーコリンズ・ジャパン)
伊藤拓『精神科医だけが知っている ネガティブ感情の整理術』(ハーパーコリンズ・ジャパン)

うつ病などの治療では、脳内のセロトニンやノルアドレナリンの濃度を高めるための薬剤を使用するのですが、それほどこの2つの脳内物質は感情と深いかかわりがあるのです。

特に、「幸せホルモン」の1つとして紹介されることも多いセロトニンは、外からの刺激(ストレス)に抵抗する力ともかかわりがあるので、ネガティブ感情の生まれやすさにもつながると考えられます。

脳内に分泌されたセロトニンは、「セロトニン・トランスポーター」というタンパク質によって運ばれます。セロトニン・トランスポーターには、運べるセロトニンの量によって3つの遺伝子型があると言われています。それぞれの遺伝子型が持っているバケツの大きさが違うと考えると、わかりやすいかもしれません。