東京に多いフリーター医師が無痛分娩で荒稼ぎ?
東京には腕のある医師も多いが、専門医コースからドロップアウトして「予防接種」「脱毛の問診」「プラセンタ注射」など何でも屋としてアルバイトで食いつなぐフリーター医師も相当数いる。小池氏が公約とする「無痛分娩の補助」制度により、こうした非麻酔科の医師が仕事を安易に受注する可能性もある。そうなると、上記のような悲惨な麻酔事故を誘発してしまう恐れもある。
東京都が高い報酬を出せば地方から麻酔科医を引き抜くことは可能だが、引き抜かれた地方病院では医師不足が加速する。「太陽光発電への補助金」が山林やら湿原の生態系を次々と破壊したように、特定分野への安易な補助金は医師の生態系を破壊するのである。
無痛分娩には補助金だけでなく産科集約化が必須
東京都で安全な無痛分娩を普及したければ、予算(お金)が必要なのは当然だが、それと並行して病院を集約化し、小規模施設を吸収合併することで効率化を進めることが必須となる。厚生労働省の定めた「時間外労働年960時間以下」を遵守しつつ24時間体制で麻酔科医を常駐させるならば、当直可能な麻酔科医が5人以上は確保する必要がある。
「無痛分娩1件10万円の補助金」レベルでの採算を考慮すれば「分娩件数は年1000件以上」の大型施設への統合は必要だろう。単なる補助金支給で満足するのではなく、産科のみならず麻酔科小児科を含めた統合を進め、医師個人のボランティア精神に頼らずシフト制で人間らしい職場環境を提供することが、回り道のようだが、持続可能な無痛分娩へのゴールとなる。こうした仕組みづくりをしなければ、小池氏は「また公約不履行」と言われることになるかもしれない。