機嫌が良くない状態が続くと身体はダメージを受ける

もしなかったとしても、想像してみてほしい。もし、あなたが映画監督、あるいは漫画家だとして、主人公が機嫌悪く、ものすごいストレスを感じているときに、主人公をどのように表現するだろうか? おそらくさきほどのような症状をもって表現するのではないだろうか。どうして、そのような身体症状を想像するのかというと、ストレス状態は人間の自律神経を揺さぶるということを自分の経験上だれもが知っているからなのだ。

「機嫌がいい」状態でなくなると、人はストレスホルモンが分泌されて自律神経の交感神経が強く反応し、自らの生命を維持しようとしてさまざまな症状を惹起するのだ。すなわち、それは生きているという証拠でもある。医学ではこれを「恒常性」と呼んでいる。外界からの刺激に対して、自分自身の命を保つためにこうして反応するのだ。

しかし、その状態が長く続くと、人の身体にはしだいにダメージを与えていくことになる。だからこそ、強いストレスを感じたら、その後には「機嫌がいい」リラックスな状態がやってこないと、さまざまな病気になってしまうのだ。

常に「機嫌がいい」状態にいるのは難しいが、この自律神経が過剰に刺激されて身体にダメージを受けるストレス状態ばかりが続くことはやはり避けたい。

外的な「ストレッサー」のすべてが悪なのではない

さて、わたしたちが「ストレス」という言葉を使うとき、外的な「ストレッサー」と感じている心のストレス状態を混同してしまっていることが多い。先述した身体反応は心の状態に揺らぎや囚われのストレス状態を感じると、さまざまなホルモンを介して自律神経が過剰反応をするのだ。

ただし、外的なストレッサーがすべて悪なのではない。ストレッサーは人間にとっての刺激であって、それが成長につながったり、強くしなやかになるために重要だったりする。

無菌室にいると、人は免疫力を獲得できずに余計に弱くなる。たとえば、それは子どもにとっては勉強、アスリートにとっては練習、ビジネスパーソンにとっては仕事だったりする。

それらのストレッサーがなければ、知識や知能は向上しないだろうし、技術や体力もアップしない。仕事のストレッサーがなければ生活もできないし、人間的成長も得られないだろう。

もちろん、理不尽な外的ストレッサーはよくないし、できれば避けたいし、それはないほうがいい。しかし、外的なストレッサーと心のストレス状態はパーフェクトイコールではない。身体的なダメージは外的なストレッサーの存在ではなく、「機嫌がいい」を失った心のストレス状態によるものだと知っていることが重要だ。

どうやって自分の機嫌を自分でとり、少しでも心のストレス状態をなくしていって、身体のダメージを回避できるかも、ビジネスパーソンが長く健康でいい仕事をするためには極めて大事だということがおわかりだろう。