本当に100年先を見据えた整備事業
『熊本城復旧基本計画』第4章6の「100年先を見据えた復元への礎づくり」には、復旧事業が長期にわたるため、必要な専門知識や技術をもつ人材を継続的に確保する必要があり、その育成に取り組むという方針が記されている。
そして当面の5年間は、石工、施工監理技術者、技術設計者など石垣の復旧に必要な人材を、20年から30年後の世代交代や技術継承まで見据えながら、育成するとされている。
さらに先の展望も示されている。前述のように熊本城では震災前まで、往時の雄姿を復元する「熊本城復元整備計画」が進められていた。それはいったん途絶えたが、「復旧後の整備事業」として、こう書かれている。
「復旧完了が2052年と仮定すると、築城後445年になります。これまで検討してきたように『幕末期など往時の熊本城への復元整備』など長期的な整備事業に挑むとすれば、築城450年あるいは500年という節目が目標となります。当然私たちの世代で成し得ることではありませんが、将来に大きな夢を託す観点からも、現代を生きる私達の復旧には大きな意味と責任があります」
100年先を見据えた視野。いま日本がもっとも失っていることを、この天下の名城と、空前の修復事業は教えてくれるのである。