高齢者はお金とどう向き合えばいいか。医師の和田秀樹さんは「高齢になったら、お金に対する考え方を改めるといい。体も心も元気で、頭もしっかりしているうちに、お金をどんどん使って人生を楽しむべきだ。老年医学に長い間携わってきた中で、患者さんが死ぬ前に後悔していたことの一つが、『お金をもっと使っておけばよかった』である。自分の楽しみにお金を使うこと、余裕があれば他人のためにも使うことで幸せを感じられ、それが心の健康や免疫力アップにつながり、ひいては老いを遅らせることにもなる」という――。

※本稿は、和田秀樹『みんなボケるんだから恐れず軽やかに老いを味わい尽くす』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。

がま口の中の硬貨を数える老婦人
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良妻賢母よりスケベじじいが愛される理由

ある老人ホームのスタッフから、こんな話を聞きました。

その施設には、同じ認知症なのに、みんなに好かれているおじいさんと、えらく嫌われているおばあさんがいるそうです。

おじいさんは、いわゆる「スケベじじい」で、ときどきヘルパーさんのお尻をさわったりするのですが、いつもニコニコしていて朗らかで、スタッフからは「どこか憎めない」ということで、笑ってゆるされます。

一方、おばあさんのほうはいつも不機嫌で、すぐに他人を責め、ヘルパーさんや看護師さんにも文句ばかり言っています。物を盗られたという被害妄想も強くて、入所者は誰も近づきません。

興味深かったのは、その二人の生い立ちです。

おじいさんは若いときからスケベで、浮気が絶えなかったそうです。妻からはもちろん、子どもたちからも尊敬されることはありませんでした。

かたや、おばあさんは、ずっと家族に尽くしてきた良妻賢母でした。周りからは「偉いねえ」「よくやるねえ」と感心されていたといいます。