日本人が就職できない!
2つ目の問題は「社会的格差・不平等の助長と固定」です。
英語を公用語にすると、社内でも圧倒的に有利になるのが図で示した特権表現階級たる英米人です。次に有利なのは英語を第2言語として使っているインドなどの旧イギリス植民地やヨーロッパの人々で、私たち労働者表現階級たる日本人は、その下に位置することになるでしょう。
英語を公用語と定める企業が増えれば、英語を使える社員の採用が優先されると思います。
そうすると、日本人として生まれ、日本で一生懸命に生きてきた人間が優良企業に就職できず、結果として「英語ができる人」と「できない人」の間で収入や地位や昇進で格差が生じることになるでしょう。
「英語ができる人」を大事にするということは、日本人を大事にしないことにつながりかねません。ひいては、英語を基軸とした格差社会に日本を変えてしまう恐れがあると私は思っているのです。
3つ目の問題は「言語権の侵害」です。
言語権の定義はいろいろとありますが、ここでは「自分の母語を使う権利」としましょう。社内公用語を英語にすると、従業員がその言語権を侵されることになるということです。
以上のような内容の手紙をお送りしましたが、いずれの会社からも返信はいただいておりません。もし両社の経営トップに聞く耳がないのだとしても、私は今後も繰り返し、同様の主張を続けていくつもりです。
※すべて雑誌掲載当時
筑波大学大学院教授 津田幸男
1950年生まれ。南イリノイ大学博士。長崎大学助教授、名古屋大学教授を経て2001年より現職。11年4月、英語公用語化に反論をつきつける『日本語防衛論』を刊行。
1950年生まれ。南イリノイ大学博士。長崎大学助教授、名古屋大学教授を経て2001年より現職。11年4月、英語公用語化に反論をつきつける『日本語防衛論』を刊行。
(構成=面澤淳市 撮影=的野弘路)