アジの開きも韓国産とヨーロッパ産頼み

干物の名産地、神奈川県小田原市の加工業者「山安」では、古くからアジの開きを作ってきたが、ここでも近場の漁港で原料となるアジを調達できなくなったため、数十年前から外国産、あるいは、遠く長崎県産などのアジを原料にするようになったという。

同社の関係者によると、「今は韓国産のアジを仕入れることが多く、あとは北欧産など。なかなか国産のアジは確保できず、輸入魚が7割近くを占めるようになっている」と打ち明ける。

静岡県の沼津市の干物作りも、輸入原料への依存度は高まっている。沼津市の干物業者によると、「地元で獲れるアジはごくわずかで、良質のアジをコンスタントに仕入れることはできない」といい、国産の干物に向く原料を求めて、長崎県などの漁港で水揚げされたアジを扱っている。

長崎県産を原料にして作られたアジの開き
筆者提供
長崎県産を原料にして作られたアジの開き

それでも十分な原料な確保できないことは多く、これまで韓国産のほか、オランダやアイルランド産のアジを調達することで生産を継続してきた。最近は「オランダやアイルランド産のアジが減産で品薄となっているため、韓国産を仕入れるケースが多い」(沼津市の干物業者)と話しており、アジの開き作りも輸入魚なしでは成り立たない現状があるようだ。

静岡・沼津の干物業者が製造したアジの開き(原料の魚は韓国産)
筆者提供
静岡・沼津の干物業者が製造したアジの開き(原料の魚は韓国産)

居酒屋ではアメリカ産のシマホッケが人気

首都圏の台所、東京・豊洲市場(江東区)でも、取引される干物の原料原産地が、外国産という種類は少なくない。サバ、アジのほか、ホッケやアカウオの開き干しも、外国産の魚が使われているのだ。

豊洲市場の加工品専門卸「丸千千代田水産」によると、ホッケの開き干しといえばかつては北海道産のマホッケが中心で、米国・アラスカ産などのシマホッケは「水っぽくて不人気だった」と話す。ところが近年、「居酒屋などで『身離れが良くて食べやすく、脂が乗っておいしい』と人気が上がり、料理店からの注文が絶えない」(豊洲卸)という。

米国産シマホッケの人気は、築地場外市場(東京都中央区)でも上昇中。今ではホッケといえば「シマホッケ」というほど需要が高まり、マホッケの仕入れをしない干物店もある。同様にアカウオの干物も、豊洲・築地ともに国産に比べ、アラスカ沖で漁獲された米国産が目立つ。さらに、干したシシャモは国産原料が少なく、ノルウェーやアイスランド産が原料に使われている。

居酒屋などで人気が高まっている米国産が原料のシマホッケ
筆者提供
居酒屋などで人気が高まっている米国産が原料のシマホッケ

干物原料に輸入魚を使うことが増える一方、「ハタハタやカマスは国産が少ないものの、外国産の代替原料がなくて品薄気味」と豊洲の卸会社。これに対し、カタクチイワシなどを使った目刺しや煮干し、シラス干しはいわゆる純国産。ムロアジなどを原料にした「くさや」についても、十分な国産原料があることなどから、わざわざ輸入魚を使って作る必要もないようだ。