魚の干物は日本で昔から食べられてきた。今、その原料は多くが国産ではなく輸入魚に置き換わっている。時事通信社水産部の川本大吾部長は「老舗店の干しサバも今やノルウェー産になっている。国産では十分な質と量を安定調達できない現状がある」という――。
保存性を高めて旨味を引き出す干物
日本の伝統食ともいえる魚の干物。日本では縄文時代から魚や貝を干して食べていた痕跡が残っており、江戸時代には各藩が地元で獲れた魚を利用して、長期保存が利く庶民の日常的な食べ物として重宝されてきた。
全国津々浦々、さまざまな干物が作られてきたが、今、周辺の魚資源の減少によって、干物の原料となる魚が国産で賄えず、海外から集められて生産されるようになっている。
魚の干物は、単に保存性を高めるだけでなく、旨味をより引き出す効果もある。水分量が多い魚を塩分入りのタレに浸けてから干すことが多く、腐りにくくすると同時に、旨味成分・アミノ酸が増え、旨味が凝縮されておいしく感じられる。
もともとは地元で獲れた魚を有効利用、ひいては付加価値を高めるべく生産されてきた干物だが、今や外国産の原料がじわり浸透している。製造するのは国内各地の水産加工業者なのだが、周辺でたくさん獲れていた魚の水揚げが少なくなり、原料を確保できなくなっているという。