原料は変わっても継承された技術は変わらない

輸入魚を使った干物などの情報は一部はラベルなどで確認できるが、干物のパックでは前面に「銚子加工」や「沼津加工」といった加工地や干物業者の屋号などの表示が目立ち、原料が輸入物とは気付かないこともあるだろう。干物を含め水産加工品を製造・販売する際には、製造者(加工業者)の所在地のほか、原料原産地の表示が義務付けられているから、買って食べる前にチェックしてみるのもいいかもしれない。

海洋環境の変化に伴い、日本周辺の魚の水揚げは低調に推移。近年は、過去最低水準を更新しているというのが現状だ。そうした中で、今後も干物の原料に外国産の魚を使うケースは増えそうだ。

ただ、原料が外国産であっても、国産を敬遠して安い輸入魚で儲けを出そうというわけではない。特に今は円安に加え、世界的に魚需要が高まっているため、簡単に安く魚を輸入できる環境ではなくなっている。

各地で干物を生産する干物業者は、かつて地元の魚を使った保存食として干物を生産してきたが、状況は一変。それでも、それぞれ培ってきた技術や製法を継承しながら、自慢の干物作りを行って消費者に提供し続けている。

例えば沼津市の干物は、アジの開き干し作りに関し、慎重な原料選びの上で魚をさばき、血抜きをし、駿河湾の海洋深層水を使った特性の塩汁に浸けてから一枚一枚アジを並べ、独自の乾燥法で旨味を引き出しながら干物を完成させている。うまく輸入魚を活用しながら、自慢の干物を作ることで伝統的な製法を守り続けていることを忘れてはならない。

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