老後のお金はなんとかなる

アリとキリギリスの話は、冬というたとえを使っていますが、老後に蓄えておかないとひどい目にあうよという寓話のように考えている人は少なくないでしょう。

さて、老後の蓄えというのはどういうものなのでしょう?

歳をとっても、それなりの生活ができるように貯金をしておこう、準備をしておこうという意味なのだと考えられます。

年金制度が充実していなかった(日本では年金は戦時中に始まりました)頃は、老後対策というと、子どもに頼るか、貯金をするかということだったのでしょうが、私が聞いた話では、老後に備えて借家のようなものを買っておいて、そこから入る家賃で生活するということもあったようです。

子どもの数も多く、長生きできる人が少なかったから、年老いた人が飢え死にや野垂れ死にすることは意外に少なかったのかもしれません。子どもが先に死ぬということは深刻なことで、私が勤めていた浴風会という老人施設は、関東大震災で子どもを亡くされたお年寄りのための救護施設として始まったのですが、そういう人は救わないといけないという意識が高かったのでしょう。

当時、子どもが若くして死ぬというと戦死が多かったと思われます。年金の先駆けと言える軍人恩給は明治8年(1875)にすでにスタートしています。

いずれにせよ、その後、年金制度が充実したわけですが、自営業者などを対象にした国民年金だけではさすがに不十分でしょうが、厚生年金(あるいは、共済年金)と国民年金(老齢基礎年金)を併せてもらえる勤め人で、家のローンや子育てが終わっていれば、普通に生活する分には困らないように設計されています。

テーブルの上の年金手帳
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年金は「老後の蓄え」、退職金は「遊ぶためのお金」

そして、その原資は自分が納めてきた年金と、会社からの拠出金や税金ということになります。

だとすると、年金そのものが、老後のために払ってきたお金から支払われるわけですから、老後の蓄えと言えることになります。

その分、給料が減らされてきたのですから、それを貯めておいて、返してもらうということです。

ついでに言うと、企業年金だって、自分が貯めてきたものに会社が足してくれるものなのだと考えていいのです。これがある人は、家のローンなどが終わっていたら、相当豊かに暮らせるはずです。

実は、現在の年金は賦課方式といって、若い人が払ってくれた保険料から年金を支給するという制度に変えられたのですが、それは政府の財政の問題であって、自分は年金をもらうために税金を含めてお金を払い続けてきたことは事実なのですから、蓄えと考えていいはずです。

では、これまで貯めてきた貯金はどうでしょうか?

国民年金だけの人や勤労年数が足りないなどの理由で、年金だけでは生活できないという場合は、貯金を取り崩して生活をしないといけないでしょう。貯金が老後の蓄えと言えます。

生活できるだけの十分な年金がある場合は、それまでに貯めていたお金とか、退職金などは、老後に遊んだり、贅沢するためのお金と言えるでしょう。