正解を求めすぎる“今時の若者”たち

私は企業研修の講師として、これまで20万人近いビジネスパーソンとお会いしてきました。毎年4月には業種業界問わず、さまざまな新入社員の方々と直接触れ合ってきました。社員教育の業界に身を置いて27年。世代ごとの人材の特徴や価値観の変化も、自分の目で見て、肌で感じてきました。

メンタルが弱い、対面でのコミュニケーションが取れない、周囲の目を気にしすぎる……Z世代の新入社員の特徴が語られる中で、実際に研修の現場で私たちが感じるZ世代の最大の特徴は「正解を求めすぎる」「失敗を怖がりすぎる」という点です。

寝室のベッドに一人で座っている女性の背面図
写真=iStock.com/Farknot_Architect
※写真はイメージです

周囲の出方を伺う人はどの世代にもいましたが、最近ではそれがほぼ全員です。頓珍漢なことを言ってしまうのが怖いと、簡単な問いかけにも答えられません。とにかくチャレンジをしない。踏み出さない。「とりあえず、間違っていてもいいからやってみよう」という気持ちがないため、やればいいだけなのに、なぜかやらない人がほとんどです。

「はじめの一歩」が遅いので、何をするにしても初動が遅れてしまいます。せっかく高い能力を持っていても、その一瞬の遅れがビジネスの世界では命取りになってしまうこともあるため、見ていてもどかしさを感じてしまうこともあります。

正解はGoogleに聞いても分からない

そこで、近年の新入社員研修では次のようなポイントを特に強調して伝えるようにしています。

①これから先は正解がないことのほうが多い

Z世代とは1990年代後半〜2010年代ごろに生まれた世代で、まさにデジタルネイティブ、SNSネイティブのはしりです。分からないことはすぐにGoogleに聞き、飲食店も映画も本もまずは口コミをチェックして「ハズレがなさそうなもの」を選ぶのが当たり前。

そうした生活の中でコスパやタイパといった効率意識が強くなり、間違った選択をして時間やお金を無駄にすることを極端に嫌います。実際、研修の受講生でも、小説をまずオチを確かめてから読む、という人がいて驚きました。

しかし、社会に出れば正解か不正解かが白黒はっきり分かれていることのほうが少ないものです。時と場合、立場によって見え方も変われば、正解も変わります。

正解が正解ではない可能性を理解した上で、あとは自分の経験体験を積み重ねていくしかありません。インターネットの集合知はとても便利で、これまで知らなかったことをたくさん教えてくれますが、本当に大切なことは自分の経験からしか学ぶことはできないのです。