「まずは質より量」の時代は終わった

そんなZ世代の新入社員たちを育成していく上で、これまでとこれからで大きな違いがあるとすれば、「とにかく量をやらせる」あり方から、まず「正しい努力のやり方を教える」という方法への転換が起こっていることです。

量か質かという議論はこれまでもずっとされてきましたが、「まずは量をこなして、そこで質を見つけて高めていく」というスタンスが一般的でした。私がはじめて営業の仕事に入ったときも、何のやり方も教えられないまま、初日から名刺交換大会に駆り出されました。

とにかくたくさん量をこなし、そこで失敗したり恥をかいたりしながら、自分なりに工夫をして、うまくいくやり方を見出してきました。

しかし、今ではそのやり方は通用しづらくなってきました。量を重ねることの重要性は変わっていませんが、社会の変化のスピードが早過ぎてそれでは間に合わないこと、残業規制などがあってそもそも時間がないこと、そして正解が分からないままやらされる若者たちの心が保たないこと、などが理由です。

「笑顔で挨拶を」より「上の歯を10本見せて」

そこで今は、「正しい努力のあり方を伝えた上で、量をやらせる」という方法にシフトしています。それも、抽象的表現は使わず、できるだけ具体的に教えます。

例えば「笑顔で挨拶をしましょう」と言っても、笑顔の基準は人それぞれです。本人は笑顔のつもりでも客観的に見ると全然笑っているように見えなかったり、「どういう笑顔がいいのか分からない」と悩んでしまったりしてしまうこともあります。そこで、「いい笑顔とは上の歯を10本見せて、目はこういう形に笑わせた表情のことを言います」と実例を見せ具体的に示した上で練習をさせます。

そんなことまでイチイチ伝えないといけないのか……と思われるかもしれませんが、伝えてください。抽象度の高い指導はまず通用しません。

ただし、Z世代の新入社員はとても素直な人が多いのも特徴です。何も知らないからこそ、真っ白なキャンバスのように、教えられたことをそのまま実践しようという人がとても多いです。こちらの教え方によってものすごく伸びる素養を持っている人がたくさんいるので、爆発的な成長も期待できます。