「便」の排泄システムは案外単純

意外に思うかもしれませんが、私たちの健康を守るための、老廃物や毒素の最も代表的な排出ルートは「便」ではありません。便に含まれるのは、食べ物のカスと腸内細菌の死骸しがい、消化酵素などにすぎません。

専門的には、口から肛門までを「消化管」と呼びます。そして、この一続きの管は「体外」と捉えられています。食べ物のちくわの穴は外界に接しており、決してちくわの中身ではありません。それと同じようなものです。

食べ物、水、空気、消化液などがその管の中を通り過ぎ、途中で必要な栄養素や水分が「体内」に取り込まれ、残りの不要物が便として排泄されるだけ。便の排泄システムは、案外単純なのです(図表1参照)。

慢性腎臓病は静かに進行し手遅れになりがち

一方、尿は便よりもずっと神秘的で複雑です。体内で発生している老廃物や毒素を腎臓が濾過し、それら不要物だけを尿として体外に出しているのですから。

「すっきり快便」は気持ちのいいものですが、消化管の働きが悪くて便が排泄されなくてもお腹が張るくらいの話です。ところが、腎臓の働きが悪くて老廃物や毒素を尿に出せなくなったら即、命に関わります。

このように、腎臓は最強かつ究極のデトックス(体内に蓄積した有害物質を排出すること)機能を有しており、毎日せっせと働いてくれています。しかし、おとなしい働き者ゆえに、疲れていてもなかなか弱音を吐きません。

文句を言い出したときには相当に弱っており、回復不可能なことも多いのです。

腎臓病には大きく、急性と慢性があります。急性腎臓病は、急激に症状が現れる反面、適切な治療を行うことで多くが治癒します。一方、慢性腎臓病は、静かに進行していき、気づいたときには手遅れになりがちです。

まずは腎臓が大事な臓器だということを覚えておいてください。