「空き家が問題だ」を疑ってみたほうがいい
現在の状況は、社会全体が「空き家が問題だ」と思い込んでいる状況であり、筆者の主張はなかなか受け入れられないし広まらない。
こうした思い込みは、個人の場合は「メンタルモデル」とか「認知バイアス」と言われるが、それが社会全体に存在するわけだ。
メディア関係者からは、「空き家問題が深刻化しています!」というのなら記事になるが、「実は空き家はそんなに多くはありません」というのは記事にならない、とよく言われる。
だとしても、現在の日本は財政的にも人口動態的にも政治的にも、解決すべき社会課題のすべてに取り組む余裕はない。
だとすれば、社会課題に対して優先順位を付けなければならず、空き家が原因ではなく結果だとすれば、他に優先すべき社会課題があるだろう。
そして、こうした社会課題への優先順位を考える時には、住調のような一つのデータだけに根拠を求めるのではなく、複数のデータを組み合わせ、全体がどのような状況になっているのかを客観的に把握する、科学的な視点が欠かせないだろう。
また、住宅・土地統計調査を責めるのは少し酷な部分があることも申し添えておく。統計調査は継続性が大切であり、調査方法を安易に変えられないという制約があるためだ。その意味では、特に情報を発信する人たちには、データを見る科学的な姿勢が大切であることはいうまでもない。
空き家問題とは、そうした科学的視点の欠如がもたらしている虚像である可能性があるのだ。