早死にした人の多くに共通する「無呼吸症」とは

一方で、早死にの原因になる特徴も多くランキングに並んだ。「いびきをかいていた、歯ぎしりをしていた、寝言を発していたというのはいずれも睡眠時無呼吸症候群(無呼吸症)に該当します」

無呼吸症とは、いったいどのような病気なのか。

「いびきなどの無呼吸症が進行すると睡眠の質が低下して日中の眠気が強くなり、事故やミスが増えます。無呼吸症が重症化した人は自動車の交通事故の発生率が約2.5倍に増えるというデータもあります。また、事故やミスだけではなく、高血圧や不整脈、脳梗塞などの体の病気、うつ病などの心の病気、さらには認知症なども引き起こします。『眠れない(不眠)』は個人の問題ですが、『眠い(過眠)』は社会の問題と言っても過言ではありません。きちんと寝ているのに昼間眠い人は、必ず睡眠外来に行ってください」

【図表】40~60代で早逝した故人が抱えていた睡眠の特徴

周囲からの指摘は金言、素直に受け止めて

無呼吸症が事故や病気を招き、死を早めることがわかった。しかし、心配する必要はない。無呼吸症は適切に治療をすればコントロールできる病気だ。

「無呼吸症は、CPAP(経鼻的持続陽圧呼吸療法)と呼ばれている専用の人工呼吸器を使えば大幅に改善できます。これは、睡眠時に専用のマスクをつけて呼吸を補助する器具で、健康保険を適用すれば1カ月5000円程度の自己負担でレンタルできます。CPAPを3時間使用すると眠気は半減、7時間以上の使用で眠気の80%以上は消失するという研究結果があります。装着時の違和感さえなければ、ほぼ完璧に眠気を抑えることができるのです」

無呼吸症は周囲の助けなくしては自覚しにくい病気だ。「いびきをかいていたり、寝言を発していてもなかなか自分では気づくことができません。しかし、せっかくご家族や友人が無呼吸症を指摘してくれたのに蔑ろにした経験がある人は少なくないのではないでしょうか。無呼吸症の指摘は金言ですので、素直に受け止めましょう」

ここまで、遠藤先生が有する最新の研究調査や編集部のアンケート結果をもとに、早死にと睡眠との関係を紐解いてきた。早死にしないためには、活動的な生活と良質な睡眠を追求し、無呼吸症の自覚があれば治療を進めることが重要。悔いを残さず残りの人生を全うするためにも、まずは自分自身の睡眠習慣を見直してみよう。

※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年7月5日号)の一部を再編集したものです。

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