4人に1人が「生涯無子」
その結果が、経済協力開発機構(OECD)のデータベースにおける、日本女性の先進国イチ、なんと27%の無子率だ。『#生涯子供なし なぜ日本は世界一、子供を持たない人が多いのか』(日経プレミアシリーズ)で、著者の福山絵里子さんは、人口学の定義では女性が50歳時点で子どもを持っていない場合を「生涯無子(チャイルドレス)」と判定すると解説する。
まさに現在アラフィフの団塊ジュニア女性がいまちょうどそこに当てはまるイメージだが、1970年生まれの日本人女性の27%、つまり4人に1人以上が「生涯子どもなし」であることが判明したのである。次いで高いフィンランドの無子率が20.7%であり、それを大きく引き離したダントツの結果だ。
また、若年女性における出産意思の低下も無視できない。先日発表された2023年の年齢別出生率では、25〜29歳の女性で最も落ち込み幅が大きく、若い世代の出産離れがあぶり出された。これを「経済負担や働き方改革の遅れから結婚や出産をためらっているのだ」と分析するのが大勢だが、ためらう以前に、そもそも彼女たちが上の世代を見た結果、日本という国に希望のある未来を描けておらず、出産を希望していないのだとの指摘もある。
子育て経験者はマイノリティ
あらためて「子持ち様」という言葉がうめき声のようにして上がってくる日本の職場環境を考えると、そこでは子育てを経験している人がマイノリティである可能性に気づく。
ある一定の年齢以上では、子育ては女性が退職してワンオペで担うものだったために、職場に残っている男性社員は特に、自分の子どもが幼いころの(本当の)子育てを真正面から経験していないことが多い。そして女性社員は、「生涯無子」と引き換えにそこにいる。若手は男女ともに晩婚傾向で、まだ結婚していない。この国における結婚出産に絶望して、子育ては自分にとっては一生他人事と感じている場合すらある。
その環境の中で、子育てしながら仕事もし、会社の制度を権利として使いながら子育ての一番しんどいけれど、いつか必ず終わりのある時期を乗り切る社員。
子育ての渦中で、自分のこともおざなりにひたすら日々の暮らしと仕事とをこなす母親や父親たちを「子持ち様」という冷たい視線で異次元扱いし、分断を生んでしまうのは、縮小していく国に出現した希望と絶望の歪んだコントラストなのかもしれない。