不動産が世界経済の不安定要因に

金利上昇により、世界の住宅市場が大きなダメージを被っている。とりわけ深刻な状況にある中国は、過剰な不動産投資により、30億人分の空き家を抱えていると言われている。

世界の不動産市況は軒並み過熱状態だ。不動産指数は、チューリッヒ(1.71)、東京(1.65)をはじめ、マイアミ(1.38)、ミュンヘン(1.35)、香港(1.24)、ジュネーブ(1.13)など、割高になっている都市が増えている(図表5)。

また、大半の市場で、住宅ローン金利の平均が2021年から3倍近くに跳ね上がっている。そのため、借入費用が大きく上昇しているのだ。また、世界中の住宅市場が金利上昇で大きなダメージを被っている。不動産はやはり、世界経済の不安定要因の最たるものと言えるだろう。

中国には不動産問題を解決する力がない

とりわけ深刻な状況にある中国の不動産問題は、おそらく解決が難しい。私は、中国は自力では解決できないと考えている。国家統計局元副局長の賀鏗氏は、「中国には30億人が住めるほどの空き家があるかもしれない。14億人の人口では埋めきれない」と述べているほどだ。

中国において急速な経済成長の柱となってきた不動産セクターだが、住宅の供給過剰で借り手がいなくなっており、今やゴーストタウンを意味する「鬼城」と呼ばれる空き家問題が発生している。

中国の事情が日欧米と異なるのは、不動産取引に銀行が介在していないことである。そこで私の解決策はこうだ。いわゆる「サービサー」(民間の債権回収業者)の業務を担うブラックロックCEOのラリー・フィンク氏を招聘して、2000兆円の金融負債を200兆円、つまり10分1で買い取ってもらうのである。

そうして30年ほどかけて何とか物になるものから直していく。世界的な投資会社であるKKR(コールバーグ・クラビス・ロバーツ)やブラックロックは、このぐらいのものを平気で抱え込む力を持っている。

日本もバブル崩壊後の1990年代には、海外からサービサーがたくさんやって来た。そして“ハゲタカ”同然に担保物件を買い叩いていったが、それでバブルは収まったのである。問題は中国にこういう発想がないことだ。それが問題解決を難しくしている。