自分を許し見守ることで、「レジリエンス」が高まる
その後、Aさんは時間をかけて心理療法を行い、徐々に気持ちが安定するようになりました。また、3年生になってからは、「初めて彼女もできました。以前の自分では考えられないことです」とうれしそうに報告してくれました。ただ、授業を休めないプレッシャーは続いているということで、何かあればいつでもカウンセリングに来るように伝えています。
大学生のクライアントさんの中には、カウンセリングで泣き出す人もいます。学生というせっかくのモラトリアム期間を、苦しんで過ごしている姿を見るのは本当につらいものです。今、悩んでいる人には、自己犠牲ばかりでは疲弊してしまい、本当の力は発揮できないということ。そして、自分の人生なのだから、もっと楽しみ、自分で選んでいいことをぜひ知ってほしいと思います。
周囲を優秀だと感じて自己効力感が低下してしまうことを「ビッグフィッシュ・リトルポンド効果」と言います。医学部の学生さんをはじめ、同じような悩みを抱える学生さんには、実はよくあることだと知ってもらいたいです。まずは、こういう状況だから、こうなることもあるよね……と自分を許し温かく見守ってあげましょう。そうやってセルフコンパッションを育んでいくことで、レジリエンス(逆境力)が高まり、困難があってもしなやかに乗り越えていけるのです。