地元の信用金庫は4000万円を出資

トーハンの社としての方針は、また別の機会の取材に譲ろう。選書にあたり沖田さんのアドバイスが参考になったというのは、総商さとう専務取締役の本庄将之さんだ。

「周囲に学校があるからには、子どもたちのために学習参考書の棚をもっとしっかりつくったほうがいいとの助言を受けて、予定より棚ひとつ分、増やしました。正解だったと思います。自分たちでは思いつかなかった視点でした。大学受験用の赤本も取り扱うつもりです」

イベントには、庄原市に本店のある広島みどり信用金庫の人たちも差し入れを持って参加していた。今回、同金庫は総商さとうに4000万円の融資をした。商談をまとめた東城支店長の森田修之さんはウィー東城店のある東城町出身で、佐藤さんの庄原市での出店の力になりたいと思ったと、こう胸を張った。

「われわれは、庄原市を商圏に事業を展開しています。地元庄原で経済が循環していくために役立つのが使命です。地域に望まれて出店する書店の開業をサポートするこのような仕事こそ、信用金庫の仕事だと思います」

「月商500万円」も実現可能

なお、庄原市内には地元の商工会と商工会議所が中心に運営する地域通貨があり、新しいこの書店も参加する予定だという。

「過疎地に本屋をつくってどうするんだ、過疎地が活性化なんてしなくていい……。都会の人が大きな数字で見ればそんなふうに考えるのを理解できないわけではありません。だけど僕らのチームなら、この小さな商圏で書店を運営できると判断しました」(佐藤さん)

地元テレビ局の取材を受ける佐藤さん
筆者撮影
地元テレビ局の取材を受ける佐藤さん

イベント前日。社長の佐藤さんに話を聞いた。口ぶりこそ穏やかなものの、都市を中心とした書店の捉え方には反発を感じているようだった。そして数字の根拠を次のように話した。

「考えてみてください。僕らは7000人の町で本を商ってきたんですよ。新店舗を出すこの地域は人口だけ見ても3倍近い。売上予測は月商500万円と設定していますが、家賃、光熱費、人件費などの経費とのバランスを考えると、十分にいける数字です。ただし、これが実現するのは、粗利が22%前後であるという書店業の事情を大家さんが考慮してくださったからです」